今年はオーケストラ以外にも歌手を聴こうと決めて、その第一弾。
ブロガーさんのお勧めで直前に購入。
前半はイタリア(ロッシーニ、ドニゼッティ)、後半はフランス語(グノー、ドニゼッティ)のオペラ序曲とアリアが交互に演奏されました。
冒頭のロッシーニ「チェネレントーラ」序曲は2日前にも聴いていますが、この日の方がオペラの序曲を実感するものでした。指揮のミケーレ・スポッティは12型でもしっかり鳴らし、最初から弦の柔らかい響きを引き出し、後半のクライマックに向けたアッチェレランドもハマっている。この指揮者、良さそうだ。
そしていよいよフローレスが登場。
声は噂通り美しいのですが、どこか線が細い….拍子抜け。一曲目だからこんなもん、ウォーミングアップなのでしょうか。
その後にイェンディが登場。南アフリカ出身のソプラノ、全く知らない歌手でしたが、響かない文化会館を切り裂くくらいの勢いの高音に度肝を抜かれ、場の空気が一気に変わりブラボーの嵐。何も知らない私は、なんでフローレスのソロではないのかと思って聴きに来ましたが、最初の2曲で主従逆転の感がありました。
そしてアナウンスが入り、フローレスは喉の不調だが、最善を尽くしてコンサートを続行しますというアナウンスが入り場内がざわつきました。
その後も歌いながら咳き込んでいたり、肺を抑える仕草をしたり辛そうでしたが、前半最後のドニゼッティの二重唱ではだいぶ声が出てきていて、後半もセーブしながらも聴かせどころはしっかり声が出ていた印象です。声のトーンの美しさは十分に伝わってきました。
後半の開始前には再度アナウンスが入り、プログラム最後に予定された「連隊の娘」のハイCのアリアが愛の妙薬に変わるとの連絡。残念ですが、コンディションを考えた上での苦渋の決断なのでしょう。日本だから許されるのか、本場ではどうなのかわかりませんが、私自身は「はじめてのフローレス」を聴けただけで良かったです。
アンコールはギターの弾き語りで蛍の光やナポリ民謡など。どんな状況でも観客を楽しませようとするエンターテイナーだと感じました。
イェンディの方は後半も絶好調。デュエットではフローレスに寄り添うような余裕すら感じさせました。
それにしても、同じ声でも前日のショスタコーヴィッチとこの日のイタリア、フランスの180度の違いといったら!音楽や歌は言葉、風土と密接なつながりがあることを改めて痛感。アンコールのイェンディの英語の歌はミュージカルに聴こえます。
歌手の存在感があまりにも強かったですが、この日の指揮者ミケーレ・スポッティとオーケストラ(東京フィル)はいい音を出していました。まだ30歳前後ですが、今度はオペラハウスで聴いてみたいものです。2時間半の、いい意味で予想を裏切るいい演奏会でした。