アメリカの自動販売機には少々の不安があった。アメリカのテレビ・ドラマで、自動販売機にお金を入れたのに商品が出てこない、という場面がよく出てくるからだ。
・・・だけど、ここは学校だし・・・、などと、まるで根拠のない言い訳をしてチャレンジすることにした。(あんまり信用していないからチャレンジと言うよりギャンブルか。)
先客はアジア系の学生だった。
「君、切手を買うの?」あ、チャイニーズ・アクセントかな。
「そうよ。」
「どれを買うの?」
「10ドルのセット。」(確か、日本へのハガキが10回かそこら送れる枚数の切手が入っているセットだったと思う。)
「僕、10ドル入れたんだけど、取り消そうとしたら返って来ないんだ。」
「機械が故障してるの?」
「いや、買うことはできるんだけど、返却だけできないんだ・・・。」ちょっと遠慮しているような口ぶりだ。
「あ、なるほど。私があなたに10ドル渡して、あなたが入れた10ドルで私が切手を買えばいいのよね!」
「そうなんだ!いい?」彼は申し訳なさそうに言った。
「いいわよ。はい。」1ドル札を二つ折りにした束の内側から10ドル札を取り出した。旅行中はホールドアップされたらすぐに渡せるように、ポケットに小額を入れておくようにしているのだ。
「ありがとう!助かったよ。君、日本人?」
「そう。あなたは?」
「僕、ホンコン・チャイニーズ。」
そうか・・・、「ホンコン」チャイニーズって言うのか・・・。わざわざ「ホンコン」をつけてチャイニーズだと名乗る人に何人か会っていた。本土とは違うぞ、というプライドを感じる表現だ。
「そう、善い一日を!」
「ありがと。君もネ。」
サギ師には見えなかったが、恐る恐る機械のボタンを押すと、ガチャン!と音を立てて切手のセットが取り出し口に落ちてきた。 ああ、よかった!≪つづく≫