映画『九十歳。何がめでたい』を観に行く。

平日の昼間ということもあるが、ざっと見渡したところ、(ワタシも含めて)シニア料金対象の観客が多い。

 

佐藤愛子さんの書かれた同名エッセイを、御年90歳の女優草笛光子さんが、愛子さんに扮して演じる話だ。

エッセイを書くにいたった経緯を、唐沢寿明演じる編集者とのからみで描いていく。

寝起きの白髪頭をそのままに「今さらどこにいくわけでもないのに」と美容院に行くのもためらい、人に会いたくない、どこにも行きたくない、何もやりたくない、と億劫がる姿は、実家の高齢親の姿と重なる。

60歳を超えたわたしも、数年前までは、難なく腰が上がった行動や動作も今では考えるだけで億劫でげんなりとしてしまうことが増えた。

ましてや90歳超えとなれば、それは想像すらできない。

 

若い時にはさわやかさを絵に描いたような役柄、そして最近は渋い役柄の多かった唐沢さん演じる、周りから煙たがられそれでも我が道を半ば強引に猛進する編集者と愛子さんの掛け合いもとてもおもしろい。

会社では時代遅れと敬遠される彼も、愛子さんの前では、若々しく頼もしく見える。

彼が、今まで気づかずに失ってしまったものを振り返るくだりではこちらもしみじみとさせられた。

50歳から60歳というのはそういう年齢でもあるのだろう。

 

後半、愛子さんがビシッときれいに着物をこなし、インタビューに答える。

「わたしは書いているときが1番機嫌がいいんです」

 

エンドロールの終わりに、「2023年、佐藤愛子さんは100歳を迎えました」と出ると、観客の中から感嘆とも思えるため息が漏れた。

「九十歳」のエッセイからもうすでに10年経ったのだ。