昨年の10月30日にDA502の開発裏話を投稿しましたが、

今回はDA502の発売に向け、

開発の経緯と商品コンセプト及び拘りの設計仕様を投稿します。

(販売価格は現時点では未定ですが、25~30万円になる予定です。)

DA502全景

 

フロントパネル

 

リアパネル

 

■開発の経緯と商品コンセプト


そもそも、スピーカー・システム・メーカーであるTom's labがなぜオーディオ・アンプの開発に手を染めたか・・・

 

 Tom's labがハイエンド・オーディオ・マニア向けの高音質・高解像度の無指向性スピーカーRP123とRP082を開発し、色々な環境で試聴を繰り返していた時、一部のマニアの好む音の方向が、原音波形に忠実な高解像度方向ではなく、なめらかで耳障りの良い音を好み、更には、どの様な音源でも聴きやすい音で鳴らしてくれるアンプが好まれていることに気づいた。

 

 私はその事に疑問をいだいていたが、たまたま同じ意見を持っていたある開発会社のエンジニアのS氏が、最新の優秀なデジタル・アンプ・チップを用いてシンプルで適切な音声回路を構成することにより、忠実再生に拘ったアンプを開発することが出来る、との考えを披露してくれた。S氏はオーディオ・アンプに造詣が深いだけではなく、医療機器や監視機器などの最先端技術にも精通しており、広範囲な知識の持ち主である。
 それがきっかけでDA502の前身のDA302(オーダーメイド製品)の開発が2013年の夏から始まった。(*:ここで言う忠実再生とは、入力された信号を聴きやすくしたり誇張したりせず、良い音源はその良さをそっくりそのまま、悪い音源も脚色せずに悪いまま再生するすることを意味する。)
 
その後、更なる高音質・高性能を目指したDA502の検討が2016年の夏頃から始まり、3年以上の開発期間の末、2019年10月にバラック試作品が完成し、そして今年2020年の2月に製品が完成した。

 

商品コンセプトは、高音質な忠実再生。

 

忠実再生の為の論理的な考察を重視し、高解像度を目指した回路構成とするが、本当に音が良いかどうかについては比較試聴を繰り返し、感性的な評価を持って最終判断とする。
ただし、無益なコストアップは避けること。
試聴風景
 

具体的には、最新の優秀(ハイスペック)なデジタル・アンプ・チップと高精度の周辺回路素子を用い、更にはデジタル・アンプが不得意とされる部分は視点を変えてこれを補い、適切な回路構成を用いてシンプルな音声回路を形成することにより、忠実再生に拘る。

 

■設計仕様
シンプル且つ適切な回路設計

 

(1)スイッチング電源から供給されるDC電源を、パワーアンプ基板上に設けられた適切な電源回路でコンバートして再調整し、瞬発力あるクリーンな電源を作り出している。(出音チェックにて、巨大リチュームバッテリーと遜色無いことを確認済み。)

尚、使用しているスイッチング電源は、ファンレスタイプで最大級の出力が得られるものを選定。

 

(2)音量コントロール回路に、7個のチップ抵抗の組み合わせをロータリーエンコーダーで切り替えて128段階の二進数音量コントロール方式を採用し、音質対応を優先させた。
尚、このロータリーエンコーダーを押すことにより音量はミュート状態になり、回転することによりインプットセレクターとして働く。もう一度押すことにより、以前の音量状態に戻る。

 

(3)音声信号通過回路をシンプルにするため、複雑な論理回路を構成しているが、演奏時には、クロック発振を停止しノイズの混入を防止している。
 

(4)パターン配線を極力短く対象にし、更にはグランドパターンの配置にもこだわり、高周波レベルでの信号処理の最適化を目指した。

 

DA502内部

 

ハイスペックで高精度な電子部品


(1)最終段のコイル、コンデンサー
全数測定し、共振周波数が同じになるように組み合わせる。
コイルはCoilcraft製VER2923-682KLを使用し、必要容量の10倍の余裕。
 DCR 2.3mΩ、Isat 48A
WIMA製フィルム・コンデンサーを使用。
 特にヨーロッパで音が良いコンデンサーとして認知度が高い。

 

(2)オペアンプ

好みにより選択可能。

 TI製 OPA1612 特徴 超低歪み 0.000015% マニア好みのしっとりとした音質。
 LT製 LT1364 特徴 超高速 1000v/usec SlewRate 特出した超解像度。

 

(3)パワーアンプチップ超HD評価のTI製TPA3251D2 

 特徴 超低歪み 0.005%(1W時)

 HiPower 140w/4Ω (1%歪み時)

 

(4)カップリングコンのルビコン(薄膜高分子積層コンデンサー)

アルミ電解コンデンサに比較して解像度や透明感があり、澄んだ音になる。

 

(5)音声信号が通過する抵抗は、誤差0.1%の薄膜抵抗使用

抵抗熱雑音が少なく澄んだ音になる。

 

(6)プリント基板

4層 FR4 銅箔厚70umにて製作。

一般的な銅箔厚35umに比べ、大電流や振動に対する性能が向上。

 
(7)半田

クリーム半田を使用せず、Kester44を使用し、チップ部品を手作業でソルダリング。

Kester44は、以前行った音質評価で最も評価が高かった。

 

その他、忠実再生に拘った設計仕様


(1)プリント基板の黒色レジスト

通常は半透明の緑色などが使われるが、音質的に好ましいと言われる黒色のレジストを採用。

パターンが見えなくなるので修理等には不利になるが、音質を優先した。

 

(2)ボトムカバーとトップカバーを連結する支柱
ボトムカバーとトップカバーは非磁性体であるアルミ板(T=2.0)を使用しているが、振動を防止するために共振モードを考慮したポイント(8か所)を真鍮製の支柱で固定。

 

(3)高品質のツイストペアケーブル

リアパネルの端子と基板を繋ぐ信号用ケーブルは、通常シールド線が使われることが多いが、論理的に信号伝送に優れており、且つ試聴確認でも優位な高品質の撚線(AWG18)をツイストペアにしたものを使用。

 

(4)金メッキネジ式端子

線材と基板の接続には、基板上の信号パターンの配置的に最適な位置に金メッキネジ式端子を配し、高周波レベルでの信号処理を最適化している。
また、線材の端子部には端子名を入れ、今後のグレードアップなどにも配慮。

 

パワーアンプ部詳細