現在開発中のDIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER DA502 

に関する技術的に興味深い話や、

大手メーカーでは暴露しにくい裏話などを、

良識の範囲内で出来る限り投稿していきたいと思う。

 

賛否両論あるデジタルアンプだが、

最新の優秀なデジタルアンプチップと高精度の周辺回路素子を用い、

更にはデジタルアンプが不得意とされる部分は視点を変えてこれを補い、

適切な回路構成を用いてシンプルな音声回路を形成することにより、

忠実再生に拘ったアンプを開発することが出来ると考える。

(*:ここで言う忠実再生とは、

入力された信号を聴きやすくしたり誇張したりせず、

良い音源はその良さをそっくりそのまま、

悪い音源も脚色せずに悪いまま再生するすることを意味する。)


DA502は、前身のDA302(オーダーメイド製品)の設計思想を継承し、

無益なコストアップは避け、

忠実再生の為の論理的な考察を重視する。

また、本当に音が良いかどうかの比較試聴を繰り返し、

感性的な評価を持って最終判断とする。

 

先日、音質評価用のバラック試作品が完成し、

10/3にTom's labの試聴室にて回路構成や

使用素子の違いによる音質確認を行った。

 (1)前段オペアンプの違い             
 TI製OPA1612は滑らかでオーディオマニアが好みそうな音質。
 LT製LT1364はソロ楽器が浮き立つ様な派手目な音質。
 どちらも捨てがたいので選択可能にしたい。
(2)音量切替方式の違い(VR方式とR切替方式)
 VR方式に比べR切替方式の方が音の描写力が格段に高い。
(3)音量コントロール用オペアンプの違い    
 大きな差は感じ取れなかった。

 

半田の違いによる音質の差や、チップコンデンサーの違い

による音質の差については、以前確認済み。

 

こだわりの回路設計
(1)一般的なスイッチング電源から供給されるDC電源を、

パワーアンプ基板上に設けられた電源回路で再調整し、

瞬発力あるクリーンな電源を作り出している。
(2)音量コントロール回路に、7個のチップ抵抗の     

組み合わせによる二進数音量コントロール方式を採用し、

音質対応を優先させた。
(3)音声信号通過回路をシンプルにするため、      

複雑な論理回路を構成しているが、

演奏時には、クロック発振を停止しノイズの混入を防止している。
(4)パターン配線を極力短く対象にし、           

更にはグランドパターンの配置にもこだわり、

高周波レベルでの信号処理の最適化を目指した。

 

こだわりの電子部品
(1)最終段のコイル、コンデンサー
 全数測定し、共振周波数が同じになるように組み合わせる。
 コイルは必要容量の10倍の余裕。
  DCR 2.3mΩ、Isat 48A
 コンデンサ
  WIMA製フィルムコンデンサ
(2)オペアンプ            
 好みにより選択可能。
 TI製 OPA1612 特徴 超低歪み 0.000015%
 LT製 LT1364 特徴 超高速 1000v/usec SlewRate
(3)パワーアンプチップ       
 TI製 TPA3251D2 
  特徴 超低歪み 0.005%(1W時)
  HiPower 140w/4Ω (1%歪み時)
(4)カップリングコンのルビコン  
  アルミ電解コンデンサに比較して澄んだ音になる。
(5)音声信号が通過する抵抗は、

誤差0.1%の薄膜抵抗使用
  抵抗熱雑音が少なく澄んだ音になる。
(6)プリント基板          
  4層 FR4 銅箔厚70umにて製作。
(7)半田              
  クリーム半田を使用せず、Kester44を使用。

 

筐体のこだわり
(1)磁性材である鉄板は使用しない。
(2)ボトムカバーとトップカバーを   

真鍮製スペーサーにて強固に固定し、

振動をシャットアウト。

 

共通開発モデルとして、

50W×2ch DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER DA502、

50W×2ch DIGITAL INTEGRATED MULTI AMPLIFIER DA502M、

50W×4ch DIGITAL MULTI POWER AMPLIFIER DA504M

を計画している。

開発裏話(その1)
DA502には、アンバランス入力(RCA)を3セットと

バランス入力(XLR)を1セット用意している。

先日の音質確認会で、まずバランス入力で再生し、

その後アンバランス入力で再生した。

送り出し器はDENON DCD-SA1のCDプレヤー。

結果、バランス入力の方が少しこもった様な音に聴こえた。

 

その原因がXLR端子の極性(HOT,COLD)の接続が逆であることに気付き、

配線を切り替えて接続し直したところ、正常に再生された。

 

実は、このXLR端子の極性はメーカーによってばらばらで、

DENONはUSA方式で3番端子がHOTで2番端子がCOLD、

YAMAHAなどはヨーロッパ方式で、2番端子がHOTで3番端子がCOLD。

音質が変わる原因をDENONとYAMAHAの

カスタマーサービスに問い合わせてみたところ、

音質が変わる可能性があることは認識していたが、

その具体的な原因までは掴んでいない様だった。


一般的な認識としては、

XLR端子の極性が逆接続になっていても、

出力が逆相になるだけで、音質が変わるという認識はない。

しかし、回路的な原因もさることながら、

音が出る瞬間にスピーカーの振動板が手前側に出るか

後側に出るかが違ってくるので、

音質が違って聴こえる可能性もありそうだ。
オーディオショップなどでの試聴会で、

バランス接続が逆接続状態で再生してしまい、

アンプやCDプレヤーの音質を間違って評価している可能性もありそうだ。

 

開発裏話(その2)
DA502開発者のS氏は、

自宅でDA302のマルチアンプバージョンを使用しているが、

電源についてもかなりのこだわりがあり、

家庭蓄電用の大型のリチウムイオン電池を使用していた。

DA502の自宅での音質チェックでも、

シビアな音質チェックの為にこのリチウムイオン電池を使用していたが、

チェック後半で標準仕様のスイッチング電源に交換してみたところ、

全く差が無いことに気付いたらしい。

 

DA302及びDA502に搭載されているDC電源の再調整化回路の

効果が裏付けられた出来事だった。

 

そこでS氏は、大型のリチウムイオン電池を廃棄したいが、

ばらすことも出来ず、簡単に廃棄できなくて困っているとのこと。