第14課は「みんなの日本語」における、最初の難関というか壁と言われます。


はじめて動詞の変換が出てくるからです。


今までは「~ます」「~ません」「~ました」「~ませんでした」のように「~」の部分は変わりませんでしたが、14課をはじめとして、徐々に変化するものが出てきます。


壁と言っても、私は正直「変換」練習が一番教えるのがやさしいと思っています。

やり方さえわかれば、あとは練習あるのみですから。


ですので、あまり「難しい」と考えず、さっさとマスター?してしまいましょう。



動詞の変換に必要なものは前述した「動詞のグループ 」です。


14課に入る前にグループ分けは必ず確認しておいたほうがいいです。


では、練習Aを確認しましょう。


1)て形一覧

2)~てください(指示)

3)~てください(依頼)

4)~ましょうか

5)~ています


1回の授業で全部は難しいと思いますので、できれば1~3で1回、4,5で1回と2回に分けられると復習もできますし、いいと思います。


では、一回目のて形の導入のしかたです。
説明するのがちょっと大変なので、教案風に書きます。


<基本的な流れ て形の導入>

(事前にグループ分けは練習しておく)


1)「立ってください」「食べてください」など、学習者が知っている「~てください」をあげてもらったり、指示したりする (板書するか、FC(フラッシュカード、単語を書いたカード)に書いておくと、あとでます形を比較しやすい)


2)知っている「~てください」のFCと「~ます」のFCを比べ、同じと思うものをペアにしてみる

  (例:「たべてください」のカードと「たべます」のカードをペアにする)


3)そのペアをグループ分けしてみる


4)「~ます」の形と「~てください」の形が違っているものと同じものがあることを確認し、「~ます」は「ます形」、「~て」は「て形」という名前だということを提示する

  ※ときどき「~てください」全体を「て形」だと思ってしまう人がいますが、あくまで「~て」のみが「て形」です。

    ただ、この導入の際にはそんなに気にしなくてもいいです。5の「~ています」のときに確認してください。


5)「~てください」の「~て」の部分がどう変化しているか、規則性を考える(確認程度)

  ⇒「さあ、では「て形」の練習をしましょう」といってはじめます。


6)て形変換導入

  ※変換がやさしいもの(グループⅢ⇒Ⅱ⇒Ⅰ)から順番でやると混乱しにくいです。


  例) T:ボランティア  S:学習者


 グループⅢ

   T:グループⅢの動詞は?わかりますか。

   S:「します」「来ます」 (でなければT側であげてください。さっき分けたFCを取り出してもいいです。)

   T:「します」のて形は「して」です。「来ます」のて形は「きて」です。

     「勉強します」のて形は...「勉強して」です。

     「電話します」のて形は?

   S:「電話して」

   T:練習しましょう。

     (「します」「来ます」を含めたグループⅢの動詞をFCで提示し、変換練習)


(板書イメージ)
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 グループⅡ

   T:グループⅡの動詞は?

   S:(動詞をあげてもらう)

      ⇒このとき、「e」の動詞とスペシャルの動詞を区別して書いておいた方がわかりやすいです。

    

   T:(以下、グループⅢと同じ。最初のFCでの練習は「e」とスペシャルと分けて練習したほうがいいかも?)

   

   T:(グループⅡも定着したら、グループⅢのFCとmixして変換練習)


(板書イメージ)


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グループⅠ

   T:グループⅠの動詞は?

   S:(動詞をあげてもらう) 

     ⇒基本的にはⅡ,Ⅲと同じですが、動詞を並べる順番を最初から気にして書いたほうがいいです。

       (画面参照。後述します)

(板書イメージ)


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   T:グループⅠの動詞のて形は少し難しいです。覚えてください。

    「かいます」のて形は「かって」です。

     「ます」の前のひらがなを見てください。

    (FC)「かいます」 ⇒「ます」の前のひらがなは何ですか。

   S:「い」

   T:はい。そうです。ここ(「ます」の前)が「い」です。 て形は「って」です。

    「かいます」は「かって」「あいます」は「あって」。では「すいます」は?

   S:「すって」

   T:(「い」のつくことばをFCを使って、て形に変換練習)

     

    (以下、「○ちます」「○ります」を同じく練習し、) 

    ここ(「ます」の前)が「い」と「ち」と「り」 の て形は「って」です。「い」「ち」「り」⇒って

    (「い」「ち」「り」がつくことばのFCをmixで変換練習)


    (以下、「○びます」⇒「○んで」 「○みます」⇒「○んで」 :「び」「み」⇒んで)

  ※「○にます」も「○んで」ですが、「しにます」しかないので、提示するかしないかは判断してください。

      私は質問されたとき以外はとくに提示しません。


    (「○きます」⇒「○いて」、「○ぎます」⇒「○いで」、「○します」⇒「○して」と同じように練習)

  ※「行きます」のみ、「行って」になります。これはⅠグループのスペシャルだと言って、教えてください。

動詞を最初に並べておいたほうがいい理由がわかりましたか?

最後にグループⅠをまとめます。

(板書イメージ)


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板書を指しながら口に出して、「いちりって」「びみんで」「きいて」「ぎいで」「しして」と練習します。


そして、FCを全部混ぜて変換練習をします。(最初はグループごと、その後すべてミックスで)




まとめのとき、歌を歌う人もいます。

よく使われるのは「雪山賛歌(愛しのクレメンタイン)」「むすんでひらいて」「ロンドン橋」「きらきら星」など。

学習者さんが知っているものだと覚えやすいのですが、どの曲も「知らない」という人がほとんど...汗


曲によってリズムが違うので、その曲に合わせてどうぞ。


例:雪山賛歌(愛しのクレメンタイン)

いちりって

(に)びみんで

(早く!!)きいて ぎいで しして

します して

来ます 来て

いきます(orれいがい)いって


最後は「例外」が難しいときはそのまま「いきます」でやります。


どうですか??

1)担当の課はどんな内容か?


大きな項目は3つ。(練習Aに対応しています)

1)~ながら~ます

2)(習慣の)~ています

3~5)~し、~し、~


練習Aの例文の量でもわかるように、「~し、~し」がメインのようです。


  
2)どんな状況で使われるものか?


では、どんなときにつかわれるでしょうか。文を作ってみましょう。

1&2-1)私は音楽を聞きながら、料理を作っています。(習慣:同時動作)

1&2-2)アルバイトをしながら、大学に通っています。(習慣:傍ら)


3)この携帯は小さいし、軽いし、それに安いですよ。(並列)

4&5)この携帯は小さいし、軽いし、それに安い(し/から)、買います。(理由の列挙)


3)学習者が具体的にどんな場面で使えるか?


習慣を聞く会話はおしゃべりに使えると思います。一つのことだけでなく、二つ同時にすることもあるので、1と2は同時に使うこともあるのでは?


同じく理由を言うことにしても、一つだけでなくいくつも言いたいことが出てくるときに「~し、~し」は便利なことばです。 


4)この課のテーマ(目標)


  というわけで、私は


おしゃべりを通じて、


・毎日の習慣をいくつも言うことができる(1&2)

・どうして日本に来たかなど、いろいろな理由を列挙することができる(3)


を目標にしたいと思います。

さあ、ある種の難関、「普通形」にまいりましょう。


「結局、普通形ってなに?」と思っている人も多いと思います。それから「普通体との違いって?」


少し整理しましょう。


教科書の20課のところを見てみてください。


練習Aには、丁寧形と普通形の比較表があります。


丁寧形「かきます」  に 普通形「かく」

丁寧形「かきません」 に 普通形「かかない」

丁寧形「かきました」  に 普通形「かいた」

丁寧形「かきませんでした」 に 普通形「かかなかった」 が、


それぞれ対応しています。


そういうことなんです。


え??わからないという人もいらっしゃいますか。


「かきます」の普通形は「かく」 なんです。


「かきませんでした」の普通形は「かかなかった」 なんです。


あ、もっと混乱しました??


では、もっと...?にひひ


今まで勉強した形は


14課:て形

17課:ない形

18課:辞書形

20課:た形

です。


では、「かきます」のて形は?

「かきます」のない形は?

「かきます」の辞書形は?

「かきます」のた形は?


それでは「かきます」の普通形は??


考えてみましょう。


それぞれ、正解を書きますね。


「かきます」のて形は? ⇒「かいて」

「かきます」のない形は?⇒「かかない」

「かきます」の辞書形は?⇒「かく」

「かきます」のた形は?⇒「かいた」


それでは「かきます」の普通形は?? ⇒「かく」


なぞなぞみたいになってきました。


まずは、「て形」「た形」「辞書形」といった形と、「普通形」は違うということです。


「て形」「た形」「辞書形」「ない形」などを変換する場合、変換の基となる形は「ます形」です。

要するに「かきません」や「かきました」の「辞書形」はないと言うことです。


普通形の変換の基となる形は「丁寧形」なんです。「丁寧形」というのはいわゆる「です」「ます」の形です。

ですから、「かきません」「かきました」にも普通形が存在します。


変換の基になる形が違うので、変換練習の際には注意が必要になります。


ときどき、「普通形を練習しましょう」といって「かきますの辞書形は?かきませんの辞書形は?」と質問している方がいますが、それは間違っていると言うことになります。


もう少し整理します。


上記に書いたように

丁寧形「かきます」  に 普通形「かく」

丁寧形「かきません」 に 普通形「かかない」

丁寧形「かきました」  に 普通形「かいた」

丁寧形「かきませんでした」 に 普通形「かかなかった」   が対応しています。


単純に「丁寧なことば」と「カジュアルなことば」で分ければいいと思います。


もしかしたら「普通形」といわず、「カジュアル形」といったほうがわかりやすいかもしれませんね...



そこで、ちょっと前に勉強した形を思い出しましょう。


「かく」・・・何かの形ではありませんか?そうです、辞書形です。

「かかない」・・・ない形です。

「かいた」・・・た形です。


この形の作り方を覚えていれば、何の問題もありません。

単純に「丁寧なことば」から「カジュアルなことば」に変えるだけです。

辞書形は普通形にとっては「形を変える手段」でしかないんです。


でも、この3つを覚えていなければ、大変です。

みなさんが混乱したように、学習者も混乱します。


要するに日本人は「かきません」を直接「かかない」に変えることができますが、

学習者は「かきません」⇒「かきます(ます形に戻す)」⇒「かかない(ない形に変える)」というプロセスが必要なんです。


学習者はそう簡単にはプロセスを端折れません。相当な練習が必要になります。


極端な話、「かきません」の普通形は「かかない」なのだから、ない形のことを気にせず、「かきません」を「かかない」に変換する方法を考えてもいいかもしれません。


...長くなりました。


ですから、普通形に入る前にはしっかり辞書形、ない形、た形の変換の練習をしておいたほうがいいです。

普通形を教えるときに余計な変換練習は理解を妨げます。

(普通形の練習をしているはずなのに「ここは辞書形です」「これはない形です」と言ってしまうと混乱します)


それから、形容詞と名詞にももちろん普通形がありますが、単純に「~です」を取るような形が多いので、やさしいと思います。

一つ注意する点はナ形容詞と名詞の「~です」に対応する普通形「~だ」です。


後ろに「。」がつく場合など(日記など)にはこの「~だ」になりますが、後ろにくることばによってなくなったり、「な」「の」に変わることがあります。その都度ご注意ください。



なんとなくでもご理解いただけたでしょうか...



では最後に普通体っていったいなんなんでしょうか。


ああ...またか。わけがわからない...という方もいらっしゃるでしょうか。


でも話は簡単です。

「~体」というのは文体のことです。文全体。

「~形」というのは単純なことばのかたち。活用形。


普通体の中に普通形も含まれると言うことですね。あまり深く考えなくてもいいと思います。


ちなみに教科書には「普通形」のみ、文型練習帳には「普通体」のみの記載です...わかりにくい。


学習者の中には普通体でしか話せない人もいます。

「~形」だ、「~体」だと言わず、「ていねい」と「カジュアル」でわけてしまえば、そういう人にもわかりやすいと思います。