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2017-08-29 07:48:00

ドラマチック否定形

テーマ:映画鑑賞

 LOVINGはLOVEのing形かと思ったら、名前だった。『ラビング 愛という名前のふたり』はラビング夫妻の実話を基にした映画。だから「愛という名前のふたり」という日本語のサブタイトルは、何のひねりもないものだ。

 州によってはまだ異人種間の結婚が禁じられていた1950年代のアメリカで、白人男性と黒人女性のラビング夫妻は生まれ故郷のバージニア州に住むことが許されず転居させられる。2人が同時にバージニア州に入ることは許されなかったが、それでも夫妻は故郷で子供を育てることを望み……。

 

 この題材でどういう映画にしようか? 見せ場は裁判シーンにしようか? 差別によるバイオレンスシーンを描くか? 予告を見てもそのへんが見せ場かなと思わせるが、この映画はそうはしない。もっともっと地味。熱血漢の弁護士は出てこないし、憎々しげな差別主義者もいない。ラビング夫妻の結婚に対しては、一般の白人も黒人も微妙な立場を取る。

 こんな地味な作りにしたのは、実在するラビング夫妻に敬意を払ったからだろう。夫妻はマスコミによって人権問題の表舞台に引っ張り出されるが、本人たちは英雄になることを望まず、ただ「生まれ故郷で家族と暮らしたい」と望んだだけ。その思いに寄り添ったため、映画は地味だけど味わい深いものになっている。

 しかし、まんまの割りには意味が分かりにくい邦題だな。

 

実際のラビング夫妻

 

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2017-07-31 08:32:09

逆らわない国民

テーマ:映画鑑賞

 『わたしは、ダニエル・ブレイク』でもう1ネタ。興行収益の一部が貧困者のためのチャリティーに寄付されるという。そのことにコメントを求められたケン・ローチ監督。寄付に一応礼を言いながらも、そういうことじゃないんだよなぁという苦々しさが溢れている。

 ケン・ローチ監督が映画に託して言いたかったのは、社会の貧困を生み出し、救済できないでいるのは制度が間違っているからで、それを正さなければいけない、ということ。解決策は民間によるチャリティーではない。

 この映画の描き方は徹底している。役所は規則を押し付けるだけで冷たいが、市井の人たちは互いに手を差し延べ合っている。役所の中には業務を離れて助けようとしてくれる役人もいる。人は優しく、社会は冷たい。

 

 なのに、まったくこの国の国民ときたら。お上の言うことには絶対服従で、お上が自分に責任が及ぶのを避けるため「自己責任!」と言ったら、「そうだ、自己責任だ!」と互いに責任を押し付け合ってくれるんだから。政府からしたら、こんなに統治しやすい国民はいないぞ。逆らう奴がいたら、そんなのは「こんな人たち」だ。

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2017-07-29 21:09:04

主張しない言語

テーマ:映画鑑賞

 『ハドソン川の奇跡』が『SULLY』だったりと、洋画の原題があっさりと主人公の名前だけというケースは結構ある。でも、『わたしは、ダニエル・ブレイク』の場合はちょっと微妙だ。原題は『I, DANIEL BLAKE』なので直訳された邦題だが、原題と邦題の印象が全然違う。

 主人公のダニエル・ブレイクは59歳の大工。心臓の病気で働けなくなり、役所に社会保険をもらいに行くが、煩雑な手続きに振り回される。同じように役所で困っていたシングルマザーのケイティを助ける。しかし、貧困は彼らを苦しめ続け……といったケン・ローチ監督の社会派ドラマ。貧困は人間の尊厳を奪う。フードバンク(寄付された食料を貧困者に配る施設)で食料を選んでいたケイティは空腹のあまり、目の前にある缶詰を開けて食べてしまう。それもよりによって、手では食べにくいスープ状のやつを。フードバンクの人たちは慰めるが、ケイティは恥ずかしさで涙に暮れる。フードバンクにいるところを同級生に見られたケイティの娘はいじめられる。役所に行くたびに杓子定規な規定による扱いを受けるダニエルは怒って、役所の壁に落書きする。その第一声が「I DANIEL BLAKE」だ。

 激しい主張に満ちた「I DANIEL BLAKE」に比べ、日本語の「わたしはダニエル・ブレイク」ではただの自己紹介だ。一人称が「オレ」だったらよかったのか? それでも「オレはジャイアン」レベルの主張だ。むしろ「サザエでございます」のほうが下手に出つつ下克上的に主張している。だいたいにして語調の弱い日本語は主張に向かない言語だ。

 

 シナリオを他言語に翻訳に出そうとしているが、会話のニュアンスをうまく翻訳してもらえるのかどうか……。日本語は主語を省略する場合が多く、とにかく曖昧だ。翻訳用にシナリオを書き直さないといけないんじゃないかと思う。

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2017-06-25 20:59:51

恐怖!血も凍る2本立て!

テーマ:映画鑑賞

 などと茶化していいわけもない、今月上旬にギンレイホールで観た『アイ・イン・ザ・スカイ』と『ヒトラーの忘れもの』の2本立て。

 

 『アイ・イン・ザ・スカイ』の舞台は現代の対テロ戦争。英米の連合軍がアフリカ上空のドローンからの爆撃で、自爆テロを準備するテロリストを抹殺しようとする。しかし、テロリストの隠れ家のすぐ近くの道端で少女がパンを売っている。少女を助けるために爆撃をやめるか、少女を犠牲にして自爆テロを防ぐか、決断を迫られる軍人や政治家たち。

 『ヒトラーの忘れもの』の舞台は第2次大戦後のデンマーク。占領していたドイツ軍が引き揚げた後、海岸に埋められた地雷を捕虜のドイツ少年兵たちが撤去させられる。地雷の暴発で次々と命を落としていく少年たちと、彼らとだんだん親交を深めていくデンマークの教官。危険極まりない作業を捕虜にさせていることに対して国全体としては「ナチの罪を忘れるな」という論理が優先する。

 どちらもどんよりと疲れる映画だ。少女を移動させるにはパンが早く売り切れて店じまいさせればいいのだなと、英米が案ずるお買い物競争になるが、それとて命がけ。地雷が爆発するぞと構えさせたり、このシーンでは爆発しそうもないなと思わせて隙をついたり。2本とも緊張感がずっと持続する。

 ドイツ兵に地雷の後始末をさせたなんて、デンマークにそんな史実があったとは知らなかったが、よくまぁ描けたなと思う。『アイ・イン・ザ・スカイ』ともども、自国の恥にもなりかねない戦争の一面だ。この手の映画が作られると、良くも悪くも「現実はそうじゃない」という声が上がるが、それらが映画であることはよくわかっている。映画なら「最悪の事態でもうちらの国は最善を尽くしましたよ」という逃げ道を少なからず用意しておくもので、この2本だって意地悪な見方をすればそうだ。でも、それ以上に迫ってくるのは、まともな精神状態を保つのが難しいくらい、死が身近にありすぎる戦争状態だ。

 どんより疲れたよ。

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2017-05-22 22:48:39

イカ降臨

テーマ:映画鑑賞

 原作の『あなたの人生の物語』がとてもすぐれたSF短編小説だっただけに、期待していいかどうか悩ましい『メッセージ』。SF小説に詳しく書かれる神秘的な概念は、時には映像に変換されずに終わることもある。『アイ・アム・レジェンド』(原作は『地球最後の男』)なんて「レジェンド」の意味が180度変わっていたものな。

 

 悩みながらも『メッセージ』を公開2日めに観に行く。(以下、微妙にネタバレ)

 

 よかったと思う。宗教音楽のようなBGMが響き、ハリウッドの大作にしては静謐な雰囲気だった。わかりやすい悪役や観客への見せしめのためだけに殺される雑魚キャラもおらず、原作のテーマからぶれることなく、主人公の心を追っていた。商業映画なので原作にはないドンパチを入れなければならなかったのだろうけど、それも最小限に抑えられていた。

 しかし……あぁ、やっぱり中国なのね。世界の行く末の鍵を握っているのは……。つえなぁ、チャイナマネー。映画会社やサッカーチームのみならず、宇宙人の宇宙船も買い上げてしまいそうである。同じ監督の『ブレードランナー2049』も、きっと中国製レプリカントが世界を救ってくれるんだろうな。

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