本日は浜田省吾「こんな気持のまま」(1993年リリース、アルバム『その永遠の一秒に 〜The Moment Of The Moment〜』収録) です。
そんな浜田さんの転機は1992年。鈴木保奈美さん主演のフジテレビ系ドラマ「愛という名のもとに」の主題歌に1981年の曲「悲しみは雪のように」が起用されたことでした。元々は水谷公生さんアレンジの元、浜田さんの母が大病になり、その深い悲しみを詞に綴った曲でしたが、ドラマスタッフが新曲のオファーをした際に「内容を聞いてこの曲しかない」として「悲しみは雪のように」を星勝さんによるリアレンジ、リレコーディングでシングルを発売しました。これがドラマの高視聴率もあり大ヒットすることとなり、浜田さん初のオリコンシングルチャート1位を獲得したのみならず、通算10週にわたって1位を獲得しました。過去最大の売上、約170万枚を売上を記録するミリオンセラーとなり、さらには浜田さんの過去の作品も注目を集め、ドラマきっかけで「浜省ブーム」が起きました。
しかしながら浜田さん自身は1990年頃から精神的にキツイ状態が続いており、作品の世界観もそれに準じた、重く暗めの作品が発表されていました。1993年にリリースされたアルバム『その永遠の一秒に 〜The Moment Of The Moment〜』も暗い世界観は変わらない状態となっていました。サウンド・プロデュースに星さんと梁邦彦さんが参加し重厚なアレンジに仕上がっています。
そんなアルバムに収録されたのが、この「こんな気持のまま」でした。
この曲は元々1970年代には作られており、「帰れない帰さない」というタイトルでライブでは披露されていた曲でした。それをリメイクする形で、満を持してアルバムに収録されました。
ラブソングを得意とする浜田さんの作品の中でも、「男性の本当の心の底にある気持・欲望」を歌った曲となっています。
「君に電話して いつものように踊って」
「食事して そこらドライブしてさ」
彼女がいる僕。デートのお誘いを電話でして、お決まりとも言えるデート・コースで君と楽しみます。それはクラブで踊って、ご飯を食べて、夜景を見ながら海岸線をドライブしています。私には一生ない光景かもしれません
「0時になる前に 君を家まで送ってゆく」
「そんなお決りの デート・メニュー」
日付が変わる前に君を家まで送っていくのもいつものデート・コース。ここでいつも君と別れるのです。これは門限があるのか、はたまた僕が気を遣っているのか。
「もう待てないと言ったら 君 どうするの?」
「ついて来るかい? 今夜 僕に」
しかし僕だって仮にも男。本当は一夜を共にしたい気持だってあります。でも君に嫌われたくないし、ガッカリさせたくない。だからいつも日付が変わる前に君を送って終わりにするのです。でもいつまで経っても進展は無く、プラトニックな関係のまま。僕が「男」を出して君のことを抱きしめたら、君はどうするのかな? 僕について来て一夜を共にするのかな? 君の心情を頭の中で色々と考えています。
「こんな気持のまま 帰れない··· 帰せない···」
「こんな気持のまま 帰れない··· 帰せない···」
でも頭の中で色々と思考を駆け巡らせても、口に出せないのが男の情けない性。本当はこんなモヤモヤした気持では帰りたくないし、君を帰したくないのですが、口に出して嫌われたくないというのが、僕の本当の気持なのかもしれません。
オールディーズ風のナンバーで、曲の冒頭は浜田さんと町支寛二さんによるボーカルのドゥー・ワップ要素のあるサウンドが展開され、その後に本編がスタートします。「Wow wow wow wow yeah」の浜田さんの伸びやかな歌声と町支さんのファルセット・ヴォイスを効かせたコーラスが爽やかさと心の叫びを表現されているような感じがします。シンセサイザーや打ち込みで演奏されていますが、エレクトリック・ギターは安全地帯のギタリスト・武沢豊さんが、ソロパートでは長田進さんと梶原順さんが弾いています。
暗い作風のアルバムの中でも、割と明るめに作られているポップス。男性のリアルな気持が知れる曲です。男性からしたら共感…ですよね?