本日はサザンオールスターズ「はっぴいえんど」(2015年リリース、アルバム『葡萄』収録) です。
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2015年元旦。『キラーストリート』以来10年ぶりとなるオリジナル・アルバムのリリースが発表されました。それがこの『葡萄』でした。『葡萄』のタイトルは、制作時に亡くなられた医師で作家の渡辺淳一さんの処女作だった「葡萄」から拝借されたもので、漢字2文字の字面や五感の良さと、艶っぽさやエロティシズムを感じたこと、葡萄を調べた際に品種がたくさんあったこともあり、『葡萄』収録作が短編小説のような気持ちで書いた歌詞が多かったことから、このタイトルになったそうです。
その中の一曲として収録されたのがこの「はっぴいえんど」でした。
この曲はJTB「『旅を楽しむ大人の家族』篇」CMソングに起用されました。
この曲のタイトルは、1969年〜1972年に活動した日本のロック・バンドの祖とも言うべきバンド「はっぴいえんど」から拝借されました。
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とはいえ、「はっぴいえんど」はタイトルに用いたのみで、曲自体との関連性は無く、仮タイトルに至っては当時の社会的話題を集めていたゴーストライター事件から「作曲したのは別人です」という衝撃的なものでした。
歌詞は桑田さんが冒頭の「海街の〜」というワードを思い付き、当初は海辺の街を散歩する画が浮かび書いたものだが、徐々に方向性が変わっていき、サザンのメンバー、特に原由子さんへのお礼や病に倒れた時のお詫びを入れた、桑田さんの当時の想いが綴られた歌詞になっています。
「海街の風に揺れながら」
「キミは振り返り ボクに微笑みを」
海辺の街を歩く連れ添った夫婦。先を歩くキミはくるっとボクの方へ振り向き、そっと微笑みを向けるのです。
「いつまでも 幼いふたりが」
「長い道のりを 駆けてきたね」
それなりに歳を重ねた二人だけど、まだまだ中身は幼いまま。でもそんな二人も多くの出来事を経て、今ここまで生きてきました。まさに駆け抜けた人生です。
「時は流れ 互いの良いところ」
「駄目過ぎるところ 知り抜いて」
勿論、長い間一緒に生きていた二人だからこそ、お互いの良いところも悪いところも当然知っています。「悪い」では無く「駄目過ぎる」と表現するところが、相手を傷つけないような言い回しになっていて、桑田さんらしい優しさが見えて良いです。
「旅の途中で羅針盤 キミに預けたら」
「船は何度も荒海越えて Oh...」
ずっと舵を切って方向性を決めていたのはボクでした。しかし途中でその方向性を決める役割をキミに担ってもらう事に。いきなりだと何度も躓くこともありますし、試練だってあります。
「夢と希望を五線譜に 書き込んだら」
「土砂降りの雨降る 嵐の後で」
「昇る朝日が ボサノヴァを歌っていた」
そんな色々な経験を経て書く歌は、嵐続く中で一筋の光が指すかの如く、朝日が昇るような夢と希望に満ちた歌だったのでした。
「ボサノヴァ」とあるように、ボサノヴァ風味を意識したポップスバラードとなっています。曲を引っ張るのは原さんのエレクトリック・ピアノと斎藤誠さんのアコースティック・ギター。桑田さんはアレンジの構想段階からエルトン・ジョン (Sir Elton Hercules John) の「僕の歌は君の歌」(Your Song) のイメージがありつつ、桑田さんのソロ曲「風の詩を聴かせて」の世界観を取り入れたものになったそうです。その為、斎藤さんのアコースティック・ギターは「風の詩を聴かせて」同様、指弾きで弾く箇所があったり、パーカッションを野沢秀行さんではなく、成田昭彦さんが演奏するなどの拘りを持って制作されています。松田弘さんのドラムはスネアのアクセントをオール3拍目で揃えています。ベースは桑田さんが弾いています。
長年連れ添った絆を歌った曲。とても穏やかでほっこり来る、円熟味の増したサザンだから歌える曲かもしれません。