12月になりました。ブログ再開から3回目の12月を迎えます。今年も例によって今月はクリスマスソング多めでいきたいと思います。
本日はTM NETWORK「TWINKLE NIGHT (あるひとりのロマンティストの生誕)」(1985年リリース、ミニ・アルバム『TWINKLE NIGHT』収録) です。
この年の6月にセカンド・アルバム『CHILDHOOD'S END』をリリースし、『RAINBOW RAINBOW』から続いたアマチュア期のような作風に終止符を打ち、徐々に本格的なプロのグループとして気持ちを新たにすることになりました。また、9月からは初のライブツアーとなる「DRAGON THE FESTIVAL」を敢行し、TMメンバー3人+白田朗さん(キーボード)、小泉洋さん(コンピューター・プログラミング、シンセサイザー・オペレーター)、山田亘さん(ドラム) らが参加しました。特に目を引いたのが、小泉さんのブースには多くのシンセサイザーとパソコンを搭載して大掛かりなシステムでライブに臨み、音色の変化を行ったり、山田さんのドラムに合わせて同期演奏を行うなど、当時としては画期的なシステムを構築しました。(自動演奏などはYellow Magic Orchestra (YMO) のプログラミングなどを務めた松武秀樹さんが先駆者とも言えます) そしてそのライブツアーと並行して小室哲哉さんはオリジナル・ビデオ・アニメ作品 (OVA) 「吸血鬼ハンターD」のサウンド・トラック制作に取り掛かり、さらにTMとしてもアルバムを作ることになりました。それがこの『TWINKLE NIGHT』でした。
「吸血鬼ハンターD」のサウンド・トラックは小室さんソロの名義として初の作品で、制作時の作品が褒められたことでリラックスして制作出来たと話しますが、流石に2作も並行してアルバム作りを行うのは容易では無かった為、『TWINKLE NIGHT』は、クリスマス向けのミニ・アルバムとして制作されました。4曲が制作されましたが、クリスマス向けとはいえ各々が独立した作品にもなっており、オムニバス形式のアルバムとも言えます。1曲目の「YOUR SONG」は先行シングルとして作られ、シングルでは初の小室さんと木根尚登さんの共作となりました。2曲目は「組曲 VAMPIRE HUNTER D」はサウンド・トラックと繋がった作品で、TMでは初のオーケストレーションを小室さん自身が構築して制作しました。4曲目は「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」はTMでは珍しいメッセージソングとなっており、初期の代表作として人気が高い曲でもあります。
3曲目がこの「TWINKLE NIGHT (あるひとりのロマンティストの生誕)」で、アルバム表題曲となっています。表題曲だけあってコンセプトでもあるクリスマスを意識した曲となっています。作詞は小室みつ子さんが「西門加里」名義で書いていますが、みつ子さんは後年、この曲を書いたときの記憶が全くといっていいほど無いそうで、どういった過程で作ったのかはわからないそうです。(但し、TMの時は100%曲が先に出来て、詞が後であると話しているため、この曲も曲が先だった可能性は高い)
「Bellは奏でる Party's Song」
「紳士淑女のさざめく Voice」
「ベル」が登場することで、舞台背景はクリスマスであることが読み取れます。ここでのクリスマスは賑やかみたいで、盛り上がるような歌が流れ、紳士淑女がクリスマスの雰囲気に酔いしれているような状態が伺えます。
「夢の手触り 楽しめば」
「踊る吐息が 夜をちらかす」
今ここは夢のような空間。この空間を楽しめば、二人で迎える夜も素敵な一夜になることは間違いないでしょう。
「おどけて泣いた Anarchist」
「隠れ家を捜している」
「息を潜めた Communist」
「夜が明けるのを じっと待ってる」
「Anarchist」は政治的権威を否定する無政府主義者を指し、「Communist」は共産主義者を指します。楽しくクリスマスを過ごす裏では、アナーキスト達は自分たちの拠点を探すのに必死で、共産主義者は自分たちの時代が来るのを今か今かとずっと待ってる様子を描いてます。勿論、この曲に政治的な意図などは全く無いのですが、楽しいクリスマスの裏側にはこういった人も居るんだよ、といったメッセージが隠れているのです。
「TWINKLE NIGHT 幾つもの扉」
「Empty Heart 叩き続けていた」
(空っぽな心)
歌の主人公はここで出てきます。色んな思いを抱えた人たちを尻目に、このクリスマスで想い人に想いを伝えるべく、もう一度会いに行くのでした。幾つもの扉を開けても、君は居ません。そのたびに僕の空っぽの心は胸を締め付けられ、会えない寂しさ、そしてもう会えないかもと焦りを感じるのです。
「TWINKLE NIGHT 君を捜さなくちゃ」
「Come and See 今夜中に」
今夜はクリスマス。何としてでもこのクリスマスまでには君を見つけて、想いを伝えたいのです。
「綺麗な夢とひきかえにして」
「取り戻すのさ Till Tonight」
綺麗な夢なんかは要らない。それよりも僕は君が欲しいんだ、と熱い想いを胸に秘めながら、クリスマスに君を捜しているのでした。
クリスマスソングらしからぬ、ファンクやブラック・ミュージックに近い作風で、クリスマスらしさを印象付ける為に鉄琴やベルを挿入していますが、カッティング・ギターとピアノを前面にしたアップ・テンポの曲となっています。スラップ奏法のベースやドラムは小泉さんによる打ち込み、エレクトリック・ギターは北島健二さんによるものとなっています。
クリスマスソングらしさはあまり無いですが、小室さんによるクリスマスソングはこういうイメージなのかもしれません。TM初期の意欲作です。