お前の為に・・・。舘ひろし「泣かないで」 | よねともが気ままに思うブログ

よねともが気ままに思うブログ

よねともが思うことを綴るブログです。
好きな音楽をただ紹介しています。

本日は舘ひろし「泣かないで」(1984年リリース) です。




一般的には「西部警察」(テレビ朝日)、「あぶない刑事」(日本テレビ)、「代表取締役刑事」(テレビ朝日) といった刑事役の似合う「ダンディな俳優」というイメージの強い舘さんですが、俳優業よりも前に音楽活動の方がデビューが早く、シンガー・ソングライターとしても精力的に活動しています。大学在学時にバイカーをテーマにした映画を見て影響を受けた舘さんは、バイクチーム「クールス」(COOLS) を結成。俳優の岩城滉一さんや、シンガー・ソングライターで俳優の水口晴幸さんらと共にチームを作ります。「クールス」はバイクチームとして名を馳せ、リーゼントで黒の革ジャンを纏い、黒のオートバイという出で立ちで、当時の不良少年から憧れの的のような存在でした。このクールスの活動を聞いた矢沢永吉さんが、ロックバンド「キャロル」の東京・日比谷野外音楽堂での解散コンサートに、クールスを親衛隊として抜擢。岩城さんと舘さんも参加してさらにクールスの名を全国に轟かせます。その後1976年にクールスのメンバー内から楽器経験者を選抜し、舘さんがボーカルとしてロックバンドとしてデビュー。デビューシングルの「紫のハイウェイ」では「五大洋光」というペンネームで矢沢さんが作詞を担当する厚遇ぷりでした。(岩城さんは俳優としてデビューの契約していた関係でロックバンドには一切関わっていない)

しかし、1977年にメンバーとの不和や方向性の違いで舘さんはクールスを脱退。この間に始めた俳優業と両立させる形でソロのシンガー・ソングライターとしても活動を始めます。1970年代は映画への出演が専らで、デビュー作の「暴力教室」を始め、「男組 少年刑務所」(1976年)、「薔薇の標的」(1980年) の主演や「野生の証明」(1979年) の出演など、棘のある若者を演じていましたが、テレビドラマ初出演となる「西部警察」で刑事役を初めて演じ、一時降板を経て1981年〜1984年まで特機隊兼任の鳩村英次役で人気を集めます。

「西部警察」出演中は音楽活動が殆どなく、「西部警察」の劇中で自作の歌を披露するといった形でしたが、1984年8月に3年ぶりにシングルをリリースします。それがこの「泣かないで」でした。

舘さんはロックバンド出身ということもあり、石原プロモーション在籍俳優の中では石原裕次郎さんや渡哲也さんのような歌謡曲っぽい作品ではなく、寺尾聰さんと同じロックやJ-POPのような色合いとなっています。また、寺尾さんと同様に作曲も出来ることも強みで、1980年代〜1990年代まで自身の作品の殆どを自分で作曲しています。この「泣かないで」も舘さん自身で作曲を行っており多才ぶりを発揮しています。

作詞は宮原芽映さんと今野雄二さんの共作。舘さんのダンディなキャラクターそのままに、女性との別れを描いたものとなっています。

消し忘れた煙草 回り続けるレコード
途切れたままの言葉

オシャレなバーでの一コマ。消し忘れた状態で灰皿に掛けてあるタバコ。ずっと音楽が掛かっている店内に沈黙が続いたままの男女が居ます。

そっと置いた指輪 言いかけて辞めた嘘
冷めてしまった中国茶(チャイニーズ・ティー)
お前の好きだった中国茶(チャイニーズ・ティー)

どうも別れ話をしているようで、愛のしるしだった指輪を置いています。でも何処か本心で喋っているようにも感じず、何かを言いかけて辞めてしまったりと、話がなかなか進みません。その間に頼んでいた女性の好きな「中国茶」は冷めてしまっていました。

覚えのあるピアノ 小刻みに動く指
塗りつぶされた写真

店内の音楽がピアノ演奏に変わると、通い慣れ、聴き慣れたピアノの音に反応してついつい動く指。そして想い出を形にした写真。しかし、別れ話をする今では無かったものにしようと黒く塗りつぶされています。

ひびの入ったグラス こわれそうな微笑
色をなくした口紅
久しぶりにみた口紅

男性が持ったグラスは、急に別れを切り出されたやるせなさと怒りでヒビが入っています。男女の仲の亀裂という意味も持っているように思います。そしてヒビが入って壊れそうなグラスと同じように、女性も痩せがまんのように無理して微笑んでいます。そんな女性の久しぶりに見た口紅は、色が薄いもので、もう俺と会うためのものではないんだなと男性は悟るのです。そして無理に笑っている女性も、時が経つにつれて涙が出てきそうになり、寂しさを感じさせてしまいます。それを見た俺はこう言うのです。

泣かないで 泣かないで 抱き寄せてしまうから

俺とはもう終わりなんだ、お前とは別の幸せを歩もうよ。そしてお前なら直ぐに新しい出会いがあるはずたから。それが最後の、

泣かないで 泣かないで
今よりもましな優しさに会えるよ
俺の為に泣かないで

という歌詞に繋がるのです。

舘さんが作曲し、アレンジャーの神林早人さんがアレンジを手掛けています。ストリングス・ブラスセクション・ピアノが入るなど、歌謡曲の雰囲気が強いですが、間奏にはエレクトリック・ギターのソロが入り、ベースもスラップ奏法で演奏されるなど、普通の歌謡曲では終わらせない、ロックやブラック・ミュージックの要素も散りばめられた曲となっています。ピアノは歌詞にも入るほど重要な立ち位置となっており、ジャジーな雰囲気も醸し出しています。そして舘さんの歌唱もアダルトな雰囲気を出しており、まさに「大人の音楽」といった佇まいとなっています。

この曲で舘さんの曲として初めてヒットとなり、その年のNHK紅白歌合戦にも出場しました。まさに「シンガー・ソングライター、舘ひろしの代表曲」です。