本日はモーニング娘。「愛の種」(1997年リリース) です。
そもそも、「モーニング娘。」の始まりは、テレビ東京系で放送されていた人気番組「ASAYAN」での、シャ乱Qによって審査されていた「女性ロックヴォーカリストオーディション」で、約4ヶ月間に渡るオーディションの最終審査に残り、落選者の中から選ばれた5人のメンバーが有力とされ、グループを結成したのが「モーニング娘。」でした。現在ではこの5人は1期メンバーとして数えられ、モーニング娘。内ではレジェンドのような扱いとなっています。
- 中澤裕子(初代リーダー)
- 石黒彩
- 福田明日香
- 安倍なつみ
- 飯田圭織
この5人によって結成されました。出身地も年齢もバラバラの5人が、グループとしてどう成長を重ね、絆を深めあっていけるのか、色々なところが見所でした。
この5人が果たしてグループとしての適性があるのか、メジャーデビューが出来るかとうか、番組側から課題が課されました。それが「5日間で5万枚手売り達成でメジャーデビュー」もいうものでした。インディーズシングルを発売し、手売りで5万枚売ることが出来たら、メジャーデビューが出来るというものでした。そのインディーズシングルがこの「愛の種」でした。
モーニング娘。などのハロプロ系列のプロデューサーといえば、つんく♂さんがお馴染みですが、(ハロプロの総合プロデューサーは現在退任している) 本曲はつんく♂さんがプロデュースに関わっておらず、ロックバンド「パール兄弟」のボーカリストで、作詞家のサエキけんぞうさんが作詞・プロデュースを手掛け、サエキさんとは旧知の仲だったポップユニット「COSA NOSTRA (コーザ・ノストラ)」のフロントマンで作曲家・アレンジャーの桜井鉄太郎さんが作曲・編曲を手掛けました。その為、モーニング娘。の数ある曲の中でもつんく♂色が一切無い曲となっています。つんく♂さんは元々プロデュース業には否定的で、当時はオファーがあっても断っていたそうです。
サエキさんが書いた歌詞は、これからアイドルグループとして羽ばたとうとしている5人の前向きな考えと、先の見えない不安の残るスタートの狭間を描いたものです。そして、自分達の蒔いた「種」を花になったらみんなで摘み取って欲しい、という願いを込めたものとなっています。(みんなに愛されるグループになれるように、という意味があります)
「さあ 出かけよう きっと 届くから」
「髪を切って、夢をみがく」
「好きな空を、めざすために」
ここからのスタート。全てを捨て、全てをこれに賭けて荒波の芸能界に入り、グループを結成した5人。夢をいきなり「掴む」とかではなく、「みがく」というのがミソ。夢を実現させるには、ブラッシュアップさせてから、向かって目指していく表現がいいと思います。これから創り出していくアイドルグループらしい表現かもしれません。
「ねえ 風にのり もっと 輝いて」
「愛の種を まきちらしたい」
自分たちのこの歌。風に乗って輝きを増して、みんなのもとへ届くように、広く種を蒔いておこうとしています。
「いつのまに 涙はかわいた」
「なにかを残して」
急に飛び込んだ未知の世界。不安からくる涙は、決意を固めたときに乾いていました。涙は過去との訣別でもあります。「なにか」は各々の色々なものを捨てたものでしょう。
「何度でも 笑顔になれるよ」
「地球が 回るから」
地球が回る限り、やり直すことはいくらでもできます。間違ったとしても、最善のやり方が必ずあります。笑顔になれるやり方は何度でもあるのです。
「予感を超え 始まるから」
「新しい季節は 少しいぢわる」
落選者でグループ結成ということ自体、5人にとっては思ってもみないことだったでしょう。だからこそ「予感」すら与えずに歩みをはじめました。それが5人にとっては「いぢわる」なんだと思います。
「指先に 思い出をつめて マニキュアぬるから」
始まりのネイルは、それまでのたくさんの思い出を詰め込んで、マニキュアを塗っていきます。これも決意の表れでしょう。
「ほら 気づいてよ」
「うんと 光る街」
「靴を選び、かけだしたら」
「不安はもう、解けてるから」
大都会・東京でアーティストとして頑張らなきゃならない5人。新たな門出を、新しい靴を履いて踏み出した時には、もう不安はありません。
「もし 迷っても そう 進もうよ」
「自分の道 さぐりだすから」
例え生き方に迷いが生じた時は、自分の考える道を進むことが大事です。そして、必ず自分にあった生き方が出てきます。
シンプルなポップスで、後の絶頂期のダンス・ミュージック路線とは異なる音楽性ですが、始まりを感じられる前向きなサウンドとなっています。横銭ユージさんのドラムはスネアが抜ける音となっており、快活さを感じられます。ベースは六川正彦さんで、シンプルなベース・ラインながらも、曲の土台を支える素晴らしい音を出しています。キーボードは河野伸さん、エレクトリック・ギターは土屋潔さんによるものです。作曲者の桜井さんはコーラスで参加しています。
結果的に5万枚を手売りで売ることに成功し、翌年(1998年)に「モーニングコーヒー」でメジャーデビューすることになりました。今でもメンバーを変えつつも、一線級のアイドルグループとなり、25年以上続くモーニング娘。の原点ではじまりはこの曲からでした。今でも当時蒔かれた「愛の種」は多くのファンが摘んで、日本を代表するアイドルグループとなりました。
2017年のデビュー20周年時には、既に全員卒業した1期メンバーが再集結し、現役メンバーと共に、「愛の種 (20th Anniversary Ver.)」としてリアレンジされて歌われました。リアレンジを担当したのはギタリストでアレンジャーの鈴木俊介さんで、原曲のアレンジをブラッシュアップしつつ、新たなアレンジを施し、新たな魅力を引き出した曲となりました。ここではフジテレビ系「FNS歌謡祭2017」に1期メンバーが出演して披露した「愛の種 (20th Anniversary Ver.)」を。