サザンバラードNo.1の名曲。サザンオールスターズ「BLUE HEAVEN」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はもう1本。サザンオールスターズ「BLUE HEAVEN」(1997年リリース) です。




1996年のサザンオールスターズの活動はシングル2作、アルバム『Young Love』のリリース、そしてツアー・年越しライブ「牛」の開催と精力的でした。特にシングル「愛の言霊 ~Spritual Message~」はミリオンセラーとなり、サザンの代表作ともいえる作品に、「太陽は罪な奴」はサザンのイメージともいえる「夏」「明るいポップ」といった要求に最大限応えるような名曲になりました。『Young Love』では、ポップスやシンプルなロックンロールをイメージした、サザンならではのアルバムに仕上がり、サザンのオリジナル・アルバムとしては最大の売上(250万枚以上) を記録しました。

しかし、年が明けた1997年は前年までの表向きのサザンと異なる、ハードロック、プログレといった音楽性に舵を切ることになります。最初のシングル「01MESSENGER ~電子狂の詩~」はシングルではあまり無いハードロック路線となりました。結果的に「太陽は罪な奴」の売上から15万枚近くも売上を落とす結果となります。この時期のサザンは徹底的にそれまでのライト層を切り離す方向に持っていくことになり、この年の年越しライブでもコアな選曲が見られ、1998年リリースのアルバム『さくら』でも、『Young Love』の路線とは180度異なるハードロック・プログレが中心、実験的なデジタルサウンドの試みといった、それまでの「夏」「明るいポップ」の要素を感じさせないアルバムに仕上がりました。

『さくら』はミリオンセラーには届かない売上でしたが、とはいえ『さくら』の完成度は15枚あるサザンのオリジナル・アルバムの中でも特に完成度の高いアルバムでもあり、コアなファンほど好まれるアルバムであることは確かで、私自身も好きなアルバムでもあります。「LOVE AFFAIR ~秘密のデート~」のようなメロディアスな曲もありますが、そういった曲は僅かで、殆どはダークなロックといった作品が多いです。そんな時期に作られた曲がこの「BLUE HEAVEN」です。

この曲はケンタッキーフライドチキン「ケンタッキークリスマス'97」のCMソングに起用されました。前年までは竹内まりやさんの「今夜はHearty Party」でしたが、この年は一転してサザンが起用されました。

一般的にこの曲の歌詞は「失恋」をテーマにしたものだと言われていますが、実は、私はファンになった10年前からこの曲の歌詞はただの「失恋」と解釈せず、「愛する女性がこの世を去ったことの悲しみ」を歌った曲だと認識しています。この時期のサザンは先述したように、一般的なイメージで想像されるサザン像とは真逆の音楽性でした。「失恋」+「バラード」という方程式はサザンの曲に多く存在しますので、敢えてそのイメージを嫌って歌詞を書いたと推測しています。勿論、「失恋」とも取れるように書いているとは思います。「BLUE HEAVEN」というタイトルは直訳すれば「青い天国」で、一般的に海と解釈されますが、「波音」という歌詞こそ出ても、溢れる悲しみが止めどなく出ており、「海」の要素が薄く、「亡くなった女性は天国へ上がった」と解釈出来る為、本当にそのまま「天国へ向かう」という意味合いが強いタイトルなのだと思いました。その向かった天国は「海のように澄み切ったブルー」なのかな、と私は思っています。

暖かな風に乗り 君は降りてくる
海啼くカモメが 空を舞うように

この表現から、実は生きているのでは無く、「天から風に乗って、僕の元へ舞い降りた」という、実体の無い女性の姿が浮かび上がります。ただの失恋だと、この歌詞の意味合いをどう読み取るか難しい為、「愛する女性を失い、悲しみにくれる僕の前に天から舞い降りた」ことだと説明が付きます。

悲しみの幻影(まぼろし)に 人は追いすがり
いつしか慕情に 抱かれ泣き濡れる

ここでも「幻影」と表現しており、愛する女性が亡くなって、深い悲しみに暮れているように見えます。「慕情」はサザン・桑田佳祐さんの曲によく登場する言葉ですが、ただただ愛する人を思う意味合いでは元々無く、実際は「人や故郷などを距離を置いて慕う気持ち」だそうで、「距離が離れている=天国と現世」だから気持ちが高ぶって泣き濡れているのかな、と解釈しました。

愛した女性(ひと)は 翼の折れたエンジェル
夢見るたび せつない気分

「翼の折れたエンジェル」と言えば中村あゆみさんの曲を思い出す方も居ると思います。ここでの「翼の折れたエンジェル」は、ただただ天国へ上がる天使という表現では無く、「志半ばで旅立った=翼の折れた」という表現なのかな、と思いました。僕に取っても当然、突然の別れはとてつもない悲しみですが、それは旅立った君にとっても「まだやることがあった」「もっとずっと一緒にあなた(僕)と居たかった」という想いが強かったに違いありません。だから、「志半ばで旅立った女性」という表現を「翼の折れたエンジェル」という表現に託したのだと思います。

I can feel your loven' wave on the water
  (水面に君が愛した波を感じるよ。)
愛すれど面影は Blue

たまたま海に来た僕は、波を見て君の面影を感じます。君は波が好きだったな、と想い出に耽っています。

You're the wave that kissed my shore, but it's over
   (君は波を使って僕とキスした。でも終わったんだよね。)
波音は無情の Number

向こうから君は波を使って愛する僕にキスをしに来た、と僕は感じています。ロマンティックな表現ですが、もう亡くなった、ということを実感したようで、「もう終わったんだよね」と結論付けています。だからこそ、その波音は虚しく海岸に響いており、余計に終わった印象を色付けているのです。

この愛なき場所は Blue Heaven

「海」とも取れるますが、やはりただただ悲しく虚しい、失恋にしては悲しみが深すぎるからこそ、「天国」なのかな、とも思いました。また、「海」は、遠くから見ると空に繋がっているようにも見えるため、「海は天国と繋がる唯一の空間」という意味合いもあるような歌詞にとれます。

ミディアムテンポのバラードで、ほぼメンバーのみの演奏で構成されています。シンプルながら奥が深く、ただのバラードで出せない深みが歌詞との相乗効果でサウンドにも現れています。響き渡る野沢秀行さんのタンバリンは虚しさを感じます。桑田さんが弾くアコースティック・ギターは暖かみを感じますが、切ない音色を奏でています。大森隆志さんが弾くエレクトリック・ギターは、歪みを極力排して、綺麗なトーンを出しています。原由子さんのシンセサイザーは、イントロのキャッチーさとは裏腹に、1番Aメロの沈んだシンセが、天へ向かうような雰囲気を醸し出しています。松田弘さんの1番のリム・ショットは乾いた音を出すことによって、さらに虚しさを印象付けています。間奏のギターソロは桑田さんによるスライド・バーを使ったソロで、スライド・ギターの名手とも言える桑田さんの腕前が炸裂します。

アウトロでフェードアウトする間際に、桑田さんの語りが入ります。歌詞カードには8cm CD版に何故か英語訳で書かれており、よく耳を澄ませてボリュームを上げないと聴き取りにくいのですが、桑田さんの語りはこう話しています。

あなたがいたから 今もこうして生きていける 天使が消えた 愛なき道を


「いとしのエリー」から始まり、「Ya Ya (あの時代を忘れない)」「メロディ (Melody)」「真夏の果実」「涙のキッス」などなど、名バラードが多いサザンオールスターズですが、私はこの曲こそNo.1バラードであり、「サザンNo.1ソング」だと思っています。売上は「01MESSENGER」の割りを食ったせいか、「01MESSENGER」以下の売上で、ヒットとも言い難いのですが、この曲がサザン売上絶頂期の1992年~1996年頃にもし世に出ていたらミリオンセラーは確実だと思っているほどの大名曲です。サザンファンのみならず、是非もっと世に知れ渡ってもいい曲だと思います。とにかく10年間、私の1番好きなサザンはこの曲!!! です。



こちらはテレビ朝日系「ミュージックステーション」出演時のものです。