亡き君の後姿。浜田省吾「君に捧げるlove song」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は浜田省吾「君に捧げるlove song (a love song for you)」(2003年リリース) です。




1998年から「ON THE ROAD 2001」を前人未到、世紀を越えた4年に渡るライブツアーを2002年まで敢行した浜田さん。その間にキャリア初のベスト・アルバム『The History of Shogo Hamada "Since1975"』と、オリジナル・アルバム『SAVE OUR SHIP』をそれぞれリリースし、ベスト・アルバムはミリオンセラー、オリジナル・アルバムも高い評価を受けました。浜田さんがアレンジにも積極的に参加し、更に初期から関わるギタリストでアレンジャーの水谷公生さんが、デジタル・オーディオ・ソフトウェア「Pro Tools」を本格的に運用を始め、それまでにない音楽性を生み出すことに成功したことも、浜田さんの音楽性を更に広げる要因になりました。

しかし、4年という長いツアーの影響は大きく、2002年~2003年前半は主だった活動は無く、その間にセルフカバー・セレクション・アルバムの第4弾の制作を行われました。このセレクション・アルバムは『初秋』としてリリースされ、その先行シングル・新曲として制作されたのがこの「君に捧げるlove song」となります。

過去のセルフカバー・セレクション・アルバムは、特定の年代を主人公に置いた曲が選曲されていました。例えば1983年にリリースされた『Sand Castle』は、20代の大人が主人公になる曲が選曲されて制作されています。この『初秋』は、40代の大人が主人公になった曲が選曲されており、更に「秋」、そしてある程度達観した年代に差し掛かる40代というイメージから、アルバムは全体的にアコースティックなサウンドで作られているのが特徴的です。また、『SAVE OUR SHIP』とは異なり、やはり浜田さんの作品に多く関わってきたアレンジャーの星勝さんが浜田さんと共に全面的にアレンジに参加しています。アコースティックなサウンドということもあり、打ち込みは最小限に抑えられ、基本的にはバンド形態の生音で作られています。

この「君に捧げるlove song」は、元々は浜田さんが「亡き父が夢の中に現れた」という実際の出来事からインスピレーションを受けて作られた、アコースティックで尚且つ切なさと無情さを出したラブソングとなっています。

「もう行かなきゃ・・・」と手を振る 君の後姿を見送って ここで強く生きてく

イントロを経てサビからスタートしますが、この歌詞の時点で、最愛の妻は亡くなっていることがわかります。夢に出てきたのは、亡くなった君でした。亡き君は憔悴状態で後ろ向きの僕に対して、諭すように語りかけていたのでしょう。そして、「もう行かなきゃ」と離れていく君を見送って、僕は君の為に生きていくことを決意します。

季節はずれの 台風顔負けの低気圧が
窓や屋根に雨を叩きつけて 荒れ狂ってる

この夢を見る時の外の状況が、非常に強い雨と風が吹いているようですが、この状況は「弱りきった、荒れた心理状態の僕」と重なります。

ベッドルームに 目を覚ました君がいるような気がしてさ
思わず名前を呼びそうになる

荒れた天気に打ち付ける雨、その音は何処か君が居るような気配も感じます。思わずその名を呼びそうになる気持ちはわかる方も居ると思います。

目を閉じれば君がいる、どの部屋にも・・・ 思い出と呼ぶには 切なくて リアル過ぎて ふいに胸がつまる

静かに目を閉じて思い出を辿ると、どの部屋にも君の面影がずっと残っており、とても切なくてなります。受け入れられない現実に胸が詰まります。

「・・・泣かないで」と笑ってる君が 見守っていてくれるから ここで強く生きてく」 

そんな胸に詰まって涙がこぼれる僕に対して、瞳の中の君は「泣かないで」と笑って話し掛けています。この「・・・泣かないで」という表記から、君も泣きそうになるのをグッと我慢して、無理に笑うように「泣かないで」と僕に言ってているのではないか、と思います。そんな君の微笑む顔、そして「泣かないで」の一言。ここで僕が下を向いていたら、それこそ君が悲しむ。だからこそ、僕は強く生きていくんだ、と決意するのです。

前述したように、アコースティックなサウンドで展開されており、アコースティック・ギターを中心とした暖かみのあるサウンドとなっています。アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターは西川進さん、ベースは美久月千晴さん、ドラムスは小田原豊さん、キーボードは「KUWATA BAND」のキーボーディストだった小島良喜さんが演奏しています。コーラスは浜田さんによる1人多重コーラスですが、コーラスアレンジは浜田さんと、盟友でコーラスアレンジの名手である町支寛二さんが手掛けています。

秋に聴きたいアコースティック・サウンドの切ないラブソング。浜田省吾さんの歌声も相まって、より一層、涙を誘います。



このMVには女優の石田ゆり子さんが出演しています。