達郎流ダンス・ミュージック。山下達郎「LOVE'S ON FIRE」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は新作から。山下達郎「LOVE'S ON FIRE」(2022年リリース、アルバム『SOFTLY』収録) です。




達郎さんはファンク、ブラック・ミュージックといったジャンルにも造詣が深く、ソロ活動初期には、ポリリズム・ファンクを発表していました。後に大阪で大ヒットし、山下達郎の名を広げるキッカケとなった「BOMBER」(1978年)、「BOMBER」のヒットを受けてよりポップなメロディーにした「FUNKY FLUSHIN'」(1979年)、ライブを意識した「SILENT SCREAMER」(1980年)、詞が気に入っているという「メリー・ゴー・ラウンド」(1983年) といった曲を出してきました。特に現在でも「BOMBER」はファンの中でも人気な作品となっています。

今回、『SOFTLY』では先行シングルを除くと6曲の新曲が入っています。それまでの達郎路線を継承した「SHINING FROM THE INSIDE」のようなア・カペラ曲や、ブルージーな「OPPRESSION BLUES (弾圧のブルース)」といった曲もありますが、中でもブラック・ミュージック路線ながら、全く新しい達郎像を作り上げたのが、この「LOVE'S ON FIRE」です。

リリース当初はノンタイアップでしたが、2023年に入ってから西島秀俊さん主演のテレビ朝日系木曜ドラマ「警視庁アウトサイダー」の主題歌に起用されました。


「警視庁アウトサイダー」のワンシーン。

この「LOVE'S ON FIRE」を制作するキッカケとなったのは、現在の「ビルボードアメリカントップ40」というアメリカのヒット・チャートでした。現在ではサブスクリプションサービスの「Spotify」による「GLOBAL TOP 50」を聴いているそうですが、これは達郎さん自身が、アレンジ(編曲)が最重要課題と語るほど、メロディーよりもアレンジへの気の使い方を重視しているからです。アレンジは時代の流れで楽器構成やアンサンブル、シンセサイザーや録音機材などといった時代の変化で変わっており、時代の変化に対応するには、その時々のシーンの動向をこまめにチェックし、常に最新のヒットチャートに耳を傾けなければならない、といった理由からアレンジを重要視し、最新のヒットチャートを聴いている理由になります。このときにクラブシーン(昔でいうディスコ) で流れる音楽に注目しており、そういった興味から2020年代の流行を取り入れ、自分の持ち味を生かしつつ、ダンスチューンのテイスト、そして鮮度の落ちないアレンジという線を保って作られたのがこの「LOVE'S ON FIRE」でした。

達郎さんはかねてから「歌詞がメロディーに勝たないようにする」「ロックンロール・ポップミュージックは編曲が大事」と話していますが、正にこの曲のリズム・トラックのインパクトは、かなりキャッチーに作られています。それでいてやはりアレンジの耐用年数に耐えられるように、鮮度の落ちないアレンジになっているのは、令和でもさすがの職人ぶりです。イントロから殆んど流れる4小節のキャッチーなシンセ・リフ、ファンキーなベース・ライン、16ビートのハイハットと4つ打ちのバスドラム、そしてオブリガードのギター・カッティングといった、ブラック・ミュージックのラインを保っていますが、山下達郎史上例を見ないダンス・ミュージックに仕上がっています。ここまで振り切ったダンス・ミュージック路線はありません。そしての間奏のファンクなギター・ソロは痺れるようなソロになっています。全ての演奏(ドラム・ベースは打ち込み) はギター・ソロを含めて達郎さんとマニピュレーターの橋本茂昭さんによって演奏されており、橋本さんはレコーディング・ミキシングのエンジニアも務めています。

歌詞は女性に翻弄される男性を描いたもので、達郎さんによるラブソングの一貫したテーマとなっています。

どこにいても 何をしてても 片時も離れたくない
頭の中 あなたのこと 溢れかえる とめどもな

一目見た女性に一目惚れして以来、どこに居ようが、何をしてても手がつかなくなる程、一目惚れした女性のことをずっと考えています。

渇き切ったハートに あなたが触れたスパークは たちまちのワイルドファイア
燃え拡がる 瞬く間に 止められない もう僕には

「渇き切ったハート」は、ここまで恋もしてこなかった、燃えるような恋をしてこなかったという意味合いでしょう。そこに「あなた」と出逢ったことで、忽ち燃え盛るような恋に発展していきます。ここまでくると、もう僕の恋はもう止められません。

WOO WOO WOO... MY LOVE'S ON FIRE
(もう僕の恋は燃えている!)
WOO WOO WOO... YES I'M ON FIRE
(そうさ、僕は燃えている!)
WOO WOO WOO... WILDFIRE
(急速に燃え盛っているんだ!)
WOO WOO WOO... YOU'RE MY DESIRE
(君に俺の欲望をぶつけたい!)

サビの歌詞は基本的にこの歌詞ですが、「僕」はあまりにも「あなた」との出逢いが衝撃で、ゾッコンだからか、激しい主張を繰り広げています。

2番以降の歌詞はなかなか達郎さんらしからぬ過激な歌詞があります。是非聴いてみて下さい。

達郎さんには珍しく今の時代の空気感を読み取った作品だそうですが、オールド達郎ファンからは、あまり評判が良くなかったりもあるそうですが、達郎さんは保守的にならず、新しいことへの挑戦や、作家的な興味もあって作られたそうです。まさに達郎流のダンス・ミュージック。私自身は今のところ、アルバム内でこの曲が1番好きな曲で、ノリにノレる曲です。若い人にも是非この曲で踊ってもらいたいですね。