ミリオン、そして休止へ。Mr.Children「Everything (It's you)」 | よねともが気ままに思うブログ

よねともが気ままに思うブログ

よねともが思うことを綴るブログです。
好きな音楽をただ紹介しています。

本日はMr.Children「Everything (It's you)」(1997年リリース) です。




1993年リリースの「CROSS ROAD」から1996年リリースの「花 -Mémento-Mori-」まで8作連続でミリオンセラーを出すなど、絶頂期で社会現象にまでなるなど、破竹の勢いで突っ走っていたMr.Childrenでしたが、メンバー、特にボーカルの桜井和寿さんは、楽曲制作やレコーディング、リリース時に伴うテレビ出演やインタビュー、そしてライブなどによる過密なスケジュールによる肉体的疲労と精神的疲労が酷くなってきていました。1996年のアルバム『深海』は、特に精神的疲労が顕著になっていた時期に制作された結果、Mr.Childrenのアルバムの中でもかなり暗く、陰湿な作風に仕上がった作品となり、ダブルミリオンセラーとなるなど商業的な成功を得られましたが、ファンの間でも意見が分かれるなど賛否両論となりました。また、1997年に入ると桜井さんのプライベートに纏わる報道が出るなど、更に影を落とすこととなりました。

プライベートの報道は結果的に別でしたが、それまでの疲弊した状態でバンドを続けることが困難であると判断した桜井さんは、バンドの活動休止を決断します。そして、半ばベスト・アルバム的な要素のあるアルバム『BOLERO』のリリースとライブツアーをもって、Mr.Childrenは一旦活動休止となります。アルバム『BOLERO』の先行シングルとしてリリースされたのがこの「Everything (It's you)」となります。

この曲は明石家さんまさん主演の日本テレビ系ドラマ「恋のバカンス」の主題歌として書き下ろされました。


「恋のバカンス」のワンシーン。左は鈴木杏樹さん。

「恋のバカンス」は、さんまさん演じる口八丁なプレイボーイの会社員・黛勘九郎が女性二人と付き合いつつも尚、別の女性を口説こうとしているにも関わらず、年越しデート中にフラれた鈴木杏樹さん演じるOLの中村晶とバーで知り合い、ホテルに誘って手を出そうとしたことから、会社や友人、果ては晶の家族を巻き込んだ大騒動を描いたラブコメディです。当時、さんまさん主演の日本テレビ系ドラマは高視聴率で人気を誇り、このドラマも高視聴率となりました。また、内容も高く評価されており、さんまさん自身も主演したドラマの中で最も好きな作品だと後年話しています。また、このドラマで生瀬勝久さんと共演したことで、後に交友が生まれ、生瀬さん脚本の舞台にさんまさんが出演するきっかけとなります。

曲のタイトルは「Everything」で、Mr.Childrenのデビューアルバム『EVERYTHING』と全く同じタイトルを付けています。関連性は無いそうですが、この曲を制作した桜井さんが「この頃(デビュー時)に戻れた気分だった」と話すなど、原点回帰を図った、もしくは戻りたかったのだと推察されます。精神的疲労があったことから、デビュー時のような気分に戻りたかったのでしょう。

歌詞はドラマを意識したものですが、桜井さん自身を投影したような歌詞にも取れます。

世間知らずだった少年時代から 自分だけを信じていたけど
心ある人の支えの中で 何とか生きてる現在(いま)の僕で

少年時代から自分のみを信じて生きてきましたが、心ない言葉を向けられることもあり、疲弊してしまいました。でも心ある人(それはファンだったり周りのスタッフだったり、そしてメンバーだったり)たちの支えによって、ここまで走り抜けてきました。

弱音さらしたり グチをこぼしたり 他人(ひと)の痛みを 見て見ないふりをして

弱音を吐いたり愚痴をこぼしたりしてきました。でも他人の痛みを見る余裕はありませんでした。自分でいっぱいいっぱい。だから、見てみないふりをして、スルーしていました。

幸せすぎて大切な事が解りづらくなった今だから
歌う言葉さえも見つからぬまま 時間に追われ途方に暮れる

この「幸せ」は当時の状況からすると恐らく「現在の奥様」と居られる事が幸せだと思われます。だからこそ何が大切な事なのか。それが解りづらくなったのだと思います。その当時は歌詞も浮かばず、ただただ無情に時間だけが過ぎ、世間からの期待でプレッシャーで焦り、追われ、そして悩み途方に暮れ1日が過ぎるのでしょう。

愛すべき人よ 君も同じように 苦しみに似た想いを抱いてるの

「現在の奥様」も恐らく世間からのバッシングに遭い、苦しんだのでしょう。悩みを共有したいという想いを抱きたかったのだと思います。

STAY 何を犠牲にしても 守るべきものがあるとして
僕にとって今 君がそれにあたると思うんだよ

「何を犠牲にしても」とは今の地位・名誉、それらを犠牲にしても、愛する人を守ると高らかに発しています。それだけ愛しているのでしょう。

ゆったりとしたテンポで、淡々とした作風となっています。アコースティック・ギターが前面に出ていますが、田原健一さんと桜井さんによる間奏のギター・ソロはそれまでの鬱憤を晴らすかのような刺々しいソロを表現しています。プロデューサーの小林武史さんもアレンジに関わっていますが、この曲は小林さんの色は比較的薄くなっており、バンドサウンドで構成されています。最後のサビのコーラスはB.B.クィーンズの坪倉唯子さんが参加しています。

この曲は「花 -Mémento-Mori-」以来2作ぶりのミリオンセラーとなりました。そして休止に至ります。