サザン初のミリオンセラー。サザンオールスターズ「涙のキッス」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はサザンオールスターズ「涙のキッス」(1992年リリース) です。



1990年にサザンの代表曲となるバラード「真夏の果実」はそれまでのサザンのバラードとは異なるバンド・サウンドの世界観ではなく、ウクレレを用いながらもデジタルでコンピューターを用いた異色のバラードとなりましたが、その路線変更を意に介さず、メロディーの良さと桑田佳祐さんが紡ぐ歌詞もあって大ヒットとなりました。この曲によって新たなサザンのファン層が開拓出来たと同時に、オールドファンからは新鮮なサザン・サウンドを聴けたと改めて評価されることとなります。そんな「真夏の果実」と近い時期にリリースされた代表曲とも言えるバラードがこの「涙のキッス」となります。

この曲は、賀来千香子さん主演のTBS系ドラマ「ずっとあなたが好きだった」の主題歌として書き下ろされました。

「ずっとあなたが好きだった」のワンシーン。左から佐野史郎さん、賀来千香子さん、野際陽子さん

「ずっとあなたが好きだった」はTBSドラマ史においても特に有名作かつ奇作ともいえる作品となっています。脚本を手掛けたのは、後に「踊る大捜査線」を執筆する君塚良一さんでした。賀来さん演じる美和は、学生時代に付き合っていた布施博さん演じる洋介と再会するも、過去のトラブルから洋介は身を引き、お見合いで出会った佐野史郎さん演じる冬彦と結婚。しかし、冬彦の特異な性格に付いていけず、紆余曲折を経て美和は洋介と結ばれる、といったものです。ストーリー自体は恋愛ドラマそのものですが、佐野さんが演じる「冬彦さん」と、野際陽子さん演じる冬彦の母・悦子の強烈なインパクトを残した演技が話題となり、最終回で34.1%の高視聴率を記録しました。このドラマがきっかけで佐野さんは個性派俳優として知られるようになり、また野際さんも「お母さん」役が板に付いて同様の役柄を多く演じるようになりました。

桑田さんはドラマのプロデューサーから「平成版「いとしのエリー」のような曲」という注文を受け、ドラマの脚本や大筋の内容を知った上で作曲した、というエピソードがあります。 ドラマ制作当初は結末がある程度決まっており、それを知っていたのは脚本の君塚さんとドラマのプロデューサー、そして桑田さんだけだったと言われています。(君塚さんによると冬彦も当初はエキセントリックな役ではなかったが、野際さんとのシーンを見たことで大幅に役柄を変えて出番を増やして、現在の知られる冬彦像になったそう) 桑田さんはドラマの結末とリンクするようにこの曲の歌詞を書いたそうです。意外にもサザンのシングルで初めて全編日本語の歌詞で書かれたのがこの曲でした。とはいえ、大衆に受け入れられるように純粋なラブソングとして書かれています。

今すぐ逢って見つめる素振りをしてみても
なぜに黙って心離れてしまう?

君に逢ってこちらから見つめていても、君は距離を置こうとこちらを見てもくれません。何かあったのか?とも思うのですが、振り向いてくれないので、どうしても心が離れてしまいます。

泣かないで 夜が辛くても
雨に打たれた 花のように

本当は未だに「好き」という気持ちが君にはあるのですが、理由あって心を通わすことが出来ません。その辛さから泣いているのですが、僕は遠くから「泣かないで」と思うことしか出来ません。君の涙は花にハネた雨粒のように心が震えるように涙を流していたのです。

真面(まじ)でおこった時ほど 素顔が愛しくて
互いにもっと解かり合えてたつもり

振り返ると君と僕との想い出は微笑ましいものが多かったようで、本当に怒っている顔は僕にとってはとても愛しく思えていました。僕だけしか知らないはずの君の素顔で、もっと心が通じ合っていたと僕は思っていました。

行かないで 胸が痛むから
他の誰かと 出逢うために

君は他の誰かの元へ行ってしまうのです。僕は強く「行かないで!!」と思っているのですが、君は去ってしまいます。

涙のキッス もう一度
誰よりも愛してる

行く前にもう一度だけ、君とキスを。他の誰よりも僕が君を愛してると囁きます。

最後のキッス もう一度だけでも
君を胸に抱いて

君と僕との最後のキス。せめて別れる前に抱き締めたいといって、君を抱くのでした。

「バラードのサザン」と言われるほど現在ではバラードの名曲が数多くありますが、正統派のポップなバラードは、サザンのシングルではこの曲が初めてでしょう。「いとしのエリー」は1979年にリリースということもあり少し歌謡曲風味のニューミュージックという雰囲気がありますし、「Ya Ya (あの時代を忘れない)」もロック・バラードの要素があります。「メロディ (Melody)」と「真夏の果実」はコンピューターやシンセサイザーを使用した最先端のバラードです。生音で作られた、キャッチーなキーボードが使われているのはシングルではこの曲が初めてとも言えるかもしれません。イントロのキャッチーなキーボードは共同編曲・プロデュースを務めた小林武史さんで、この頃には本格的にサザンのアルバム作りに「小林色」を入れていました。このキャッチーなメロディは正に名イントロだと思います。エレクトリック・ギターは大森隆志さんとサポートメンバーの小倉博和さんが弾いています。ベースは休養中だった関口和之さんに代わって美久月千晴さんが弾いています。所々に入る野沢秀行さんのタンバリンは何処か物悲しい音がするように聴こえ、この曲のアクセントになっています。

ドラマの大ヒット、そしてポップスとして高い完成度。これらの相乗効果もあり、サザンでは史上最多となる7週連続1位を獲得し、サザン初のミリオンセラーとなりました。現在ではサザンの代表曲となっています。やはりこの曲は欠かせません。



おまけですが、2023年のサザン「茅ヶ崎ライブ2023」で披露された「涙のキッス」もどうぞ。




※自身のInstagramの投稿を再掲。2024.1.23に編集し、一部削除・書き足しました。