遠い日のシャングリラ。山下達郎「SOUTHBOUND #9」 | よねともが気ままに思うブログ

よねともが気ままに思うブログ

よねともが思うことを綴るブログです。
好きな音楽をただ紹介しています。

本日2度目の投稿。山下達郎「SOUTHBOUND #9(サウスバウンド No.9)」(1998年リリース、アルバム『COZY』収録) です。



「悲しみのJODY」を取り上げた際にも述べましたが、「夏だ、海だ、タツローだ」のイメージが付くのを嫌った達郎さんは、アルバム『MELODIES』では意図的に落ち着いた作風に仕上げ、「夏男タツロー」のイメージを回避することに成功しました。以降、『POCKET MUSIC』と『僕の中の少年』では自身の作詞による内省的な詩作になり、さらに1988年に放映が開始された東海旅客鉄道(JR東海)の「クリスマス・エクスプレス」のCMソングに、『MELODIES』収録の「クリスマス・イブ」が起用されると、CMの大ヒットも相まって、発売から8年後にミリオンセラーになるという現象が起き、夏とは真逆の「冬男」のイメージが付くようになりました。

ただ、一部のスタッフからは、「夏男タツロー」の復権を狙い、敢えて夏のイメージ全開のタイアップソングのオファーを出すなど、依然として夏の曲を求められることもありました。「踊ろよ、フィッシュ」や「さよなら夏の日」などの曲を発表し、名曲として評価された曲もあります。そして、1995年に制作されたのがこの「SOUTHBOUND #9」です。

この曲は日産・スカイラインR33型のCMソング用の書き下ろし曲として起用されました。1991年から日産・スカイラインはCMソングに達郎さんを起用し続けており、「ターナーの汽罐車」「ジャングル・スウィング」などが使われてきました。




コンガとハイハットから始まるラテンチックなイントロから始まり、ピアノが入って、達郎さんによるカッティング・ギターが軽快に鳴り響く、当時の山下達郎作品の中では明るい作風になっています。これぞまさに「夏男タツロー」を標榜した作品です。ベースは伊藤広規さん、ドラムは島村英二さん、ギター・ピアノ・パーカッションは達郎さんによるものです。島村さんのタイトな16ビートのハイハットは、この曲に爽快感と疾走感を出しています。

車のCMということもあり、南の国へ向かっている大人を描いた詞となっていますが、

ひとりの心ににじんだ 遠い日のシャングリラ
ひとりの心ににじんだ 永遠のシャングリラへ

と書いてあるように、荒んだ心を癒すべく、南の国を「シャングリラ」(理想郷) に喩えて求め歩くような歌詞になっています。ただただ底抜けに明るさを求めた物では無く、現実を踏まえて、求め続けるような詞だと思っています。

ちなみにこの曲のタイトルに「#9」が入っているのは、当時のスカイラインが9代目であることと掛けたものとなっています。「スカイライン」と山下達郎。この組み合わせが解放感のある夏の歌を作り出したのです。