僕のばあちゃんは、今入院中です。
腰椎の圧迫骨折には、果敢に立ち向かっていたのですが、
続けて心臓が不調をきたしてしまい、
とうとう入院となってから、もうすぐ1ヶ月。
お見舞いに行ったとき、さりげなく手のひらを見てみると、
ばあちゃんの手相は、実に魅力的で才能にあふれていました。
母の話からも、きっとそうだったのだろうとは思っていましたが、
想像力と文才に富み、愛情深く、人望厚い才媛の相でした。
ばあちゃんの実家は大阪で大きな会社を経営していて、
生まれる前から乳母が雇ってあったとか。
それが、ばあちゃんの小さい頃に、友人の連帯保証人になったことが原因で会社が倒産し、
一家で三重に越してきて、
その後は貧しい生活の中、必死に働いて家族を支えてきたと聞いています。
小学校を出るとすぐに家を離れ、遠い町の工場に働きに出たばあちゃんは、
学歴はありませんでしたが、
兄と僕の宿題の、短歌も俳句も瞬く間に作ってくれ、
僕らの着る服もゆかたも、全部魔法のように作ってくれました。
70歳を超えてから持つようになった携帯電話で、
楽々とデコメ入りのメールも送ってくれました。
入院中の不自由な日々の中でさえ、
「食べて、寝て、もったいないことや」と、
ばあちゃんは言います。
世界大戦をはさんだ長い年月の間、
ばあちゃんはその才能を開花させるほどの、恵まれた環境になくて、
ただひたすら家族のために働き続けた人生でした。
でも、振り返ればばあちゃんは、
その才能や愛情を、あふれるほど僕たちに注いでくれました。
ばあちゃんが持って生まれた人生の使命は、
僕たちの中では、十分すぎるほど見事に開花していました。
疲れたばあちゃんの頭には、それを伝えるのは難しくて、
僕はただただ、ばあちゃんの耳元で「ありがとうな」と言うだけです。
ばあちゃん・・・・・、ありがとうな。