命、ギガ長スW | ともさかりえ オフィシャルブログ Powered by Ameba

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「命、ギガ長スW」
無事に全公演終了しました。

今回この芝居のオファーをいただいたとき、なぜ私なんだろう…という疑問でいっぱいになったことを思い出します。安藤さんが初演で素晴らしい結果を残した役をダブルキャストでやるなんて…そんな超絶アウェーな場所に自ら乗り込みにいくなんて…そんな恐ろしいこと…できない…と思っていたのだが、松尾さんとご一緒できる機会なんて、これ逃したら二度とないかも…と、お引き受けしたのでした。

そもそも誰にも期待されていないだろうと思っていたのです。みんなが観たいのは宮藤さんと安藤さん組で、誰も私に期待してないどころか、むしろ観るのも不安だろうなぁと。でもそのネガティブな気持ちもいくとこまでいったら、今度は逆に「あ〜期待されてないって気楽だわ〜」と、ものすごく穏やかな気持ちになり、松尾さんの稽古もすごく楽しくて、マイペースに伸び伸び過ごせたのでした。でもこれは三宅さんが相手だからこそであり、これが初対面での役者さんだったり、そこまで関係性が築けていない役者さんだったら、また全然違ったんだろうな。舞監の順平くんが「倦怠期の夫婦みたい」と笑っていたけど、うん、確かにね。必要以上にコミニュケーションを取らなくても不思議な安心感があるし、多くを語らずとも何となく理解できている感覚。倦怠期とは少し違うかな。でも三宅さんのおかげで、私は自由になれたような気がします。

東京公演の前半に安藤さんが「初演でこの役をやりきったことが、ものすごく自信になった」ってお話されていて、それがとても印象深かったんだけど、私も今、そう感じています。この役を、この2人芝居を乗り越えられたんだという自信は大きなものです。安藤さんと、ギガ組と、初演と比較されたりすることは想像以上に気にならなくて、三宅さんと私は、松尾さんが演出してくれた長ス組の芝居を日々大切にするだけだなと、そのシンプルな気持ちだけで乗り越えられた。そこが揺るがなかったことが嬉しかった。小倉でギガ組を観たときも、全く知らない芝居を観ているような不思議な感覚で。スタッフさんたちが稽古からずっと、ギガ組と長ス組の「違い」が面白い!と言っていて、実際に観たらその意味がよくわかった。同じ台本なのに、役者が変われば全ての解釈が違うから、同じ台詞なのに芝居の印象まで変わる。全ての展開を知ってるのに、笑って笑って、最後は泣いていた。この戯曲の強靭さを改めて思い知らされるのでした。

まぁ、実際は日々本番を繰り返す中で、上がったり下がったり色々あったけど、そういうの含めて面白かった。必要以上に落ち込むのが私の悪い癖なので、そうならずに、適度に適当な気持ちで(語弊があるかもしれないけど、気楽に、みたいな意味合い)過ごせたことが、私の進歩。そこで起こる出来事を面白がって過ごせたことが大きな大きな収穫です。

80代のお婆ちゃんを演じるということで、どうしたものかと思っていましたが、入れ歯の威力は凄かった。あれで自ずと舌の動きに制限が出てきて、ばばあ感が出るというか。いやぁ、入れ歯に感謝。松尾さんから言われて、清水ミチコさんが野上照代さんのモノマネをしている動画を稽古初期に見たのだが、あれで私が演じるエイコの方向性が決まった気がする。清水さんと野上さんにも勝手に感謝。

22歳のアサダは、胸にケツみたいな穴が開いてる謎な衣装で、衣装のチカラは絶大だった。そもそも「胸にケツみたいな穴」なんて台詞なかったけど、あの衣装になって、そんな台詞が足されたのだった。あれこれ完璧に整えてくださった衣装の戸田さん、梅ちゃんもありがとう。いやぁ、スタッフさん全員にありがとうを言いたいです。

松本の大千秋楽は、長野に住む祖父母や叔父叔母も観に来てくれた。カーテンコールで探そうと思ったけど、じいちゃんばあちゃん見つけたら泣いてしまいそうだったのでやめておいた。カーテンコールはスタンディングオベーションで、客席のあたたかさが嬉しかった。舞台裏で三宅さんと思い切りハグして背中なでたら、じわーんと涙が出た。無事に幕が開き、無事に全公演終了。全員で完走できて本当に本当に良かった。

今回の芝居で使われていた、高田恭子さんの「みんな夢の中」は、Honziさんが歌ったヴァージョンを20代によく聴いていたので、まさか自分が舞台上で歌うことになるなんて。これからも不意に口ずさんでしまいそう。

あれこれ振り返るとキリがないけど、まぁ思い出に浸るのもここまでにして、また次へ。