怪談サークル とうもろこしの会 -293ページ目

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風呂場でナメクジが死んでいた。
たぶん台風から非難してきたっぽいのだが、ナメクジというのは水が好きなんじゃないんだろうか、あんまり雨が強すぎても嫌なのだろうか。しかも風呂場なのにカラカラに乾いて死んでいた。色々と謎の多い生き物だ。
ナメクジの謎といえば。
蛇・カエル・ナメクジの三すくみ。これがずっと疑問だった。
ナメクジって蛇より強いのだろうか?蛇>カエル>ナメクジの捕食関係は分かる。でもナメクジ>蛇って?ナメクジは蛇、食べないだろ?
なんとかしてこのモヤモヤをどうにかしようと学校の先生に質問したことがあるのだが「いや、食べるよ」と断言されてしまい、それがあからさまに面倒くさいから適当に答えました感ありありだったので信じることが出来ず、全くモヤモヤ解消には至らなかった思い出がある。年齢を重ねるにつれて三すくみについて思いを馳せることは少なくなり、ナメクジと蛇の関係で苛々することもなくなったのだが、そんなある日、インターネットで全てを解決する動画を見ることができた。
アマゾンかどこかの異常に大きいナメクジが、アマゾンかどこかの普通サイズの蛇に丸呑みにされている動画である。「ナメクジ、蛇に食べられる!食べてない!食べられるんだ!」三すくみが間違っていたというショックもさることながら、次に起きた事態を目の当たりにすることで、衝撃に追い討ちをかけられた。ナメクジを丸呑みにしようとした蛇の様子がおかしくなった。苦しげにのたうちまわる。よく見ると、口の部分がガム状のもので完全に覆われている。ナメクジだ。死んで溶けたナメクジの成分が粘っこく蛇の口を塞いでしまっているのだ。蛇はなんとかしてそれを取ろうと口を開けたり閉じたり擦ったりするのだが、文字通り無駄な足掻きだった。次のカットでは蛇はもう細かく痙攣するばかりで、ああもうこいつは助からねえな、窒息しないまでも口がこんなんじゃ餓死するしかねえよな、という感想しかもたらさないような絵面を見せつけて、そして動画は終わる。
三すくみは正しかったのだ。昔の人も、このグロテスクな光景の一部始終を見ていたのだろう。ナメクジは蛇に食べられる。しかし、同時に蛇の口に粘膜の壁を作って、死に追いやってしまう。長年の疑問が、ようやく解決した。
でも考えてみると、結局ナメクジも死んでる。これってつまり引き分け、ジャンケンで言うところのアイコじゃないのだろうか。
以上のことから、三すくみをより正確に表すとしたら
“蛇>カエル>ナメクジ、そしてナメクジ=蛇”
とまあ、こういうことになるのではないだろうか。

こうして、僕の一日は暮れていく。

10/7

寝耳に水の体験をした。
僕の部屋の天井には、人の顔っぽく見える部分がある。地縛霊かなにかかなー、誰かこの部屋で自殺でもしたのかなー、と、大して気にも留めていなかった。
ところが昨晩、台風の中で寝ていたところ、いきなり幽霊に触れられたような感覚がして飛び起きた。とっさに耳を触ると、穴の中から液体がしたたり落ちる。ぽとり、ぽとり、なにかが畳で弾ける音。はっとして天井を見上げると、顔の周辺が黒く滲んでいて、そこから雨水が滴り落ちていた。それは実は、木材の裂け目だったのだ。
仕方ないので雨漏りが落ちるところに洗面器を置いた。雨漏りに洗面器を置く状況なんて、昔、ドリフのコントで見て以来だった。


10/6


低気圧のせいなのか、いくら寝ても眠い。
雨も降っていて外に出るのが億劫なので、
家の中で松田優作のマネを極める日にする。
一月ほど前、街中で
「松田優作ってすごいキモいのにカッコいいよね」
と女子が喋っているのを小耳に挟んでしまい
僕が目指すべき方向性とはそこなんじゃないのかと
一念発起してしまっているところなのである。
鏡に向かって延々
「X、Y、Z、カチッ X、Y、Z、カチッ X、Y、Z、カチッ X、Y、Z、カチッ」
という『野獣死すべし』の決め台詞
(カチッ部分は映画では効果音)を呟いていたら
なんだかXYZという言葉とともに
自分自身がゲシュタルト崩壊していく気分になって
あやうく吐きそうになる。

そんな修行の末、
とりあえず死んだ瞳で下目づかいをしてみると
なんかユーサクっぽい雰囲気が出るってとこまでは分かった。