乃南アサ著「死んでも忘れない」

これも家の書棚にあったものをひっぱりだしてきて読んでみた。多分カミさんが以前に読んだものだろう・・
この物語は前妻に家庭を捨てられた男(41歳)、小三にして両親の離婚を突き付けられて父を選択した少年(15歳)、仕事を捨てその子持ちの男に嫁いだ女(35歳)、3人それぞれが主人公として扱われている。
まずはこれが面白い。
この3人は表向きは平穏な家族を気を使いながらも営んできた。
その平穏が、ある日それぞれに訪れたイベントを元に、崩壊していく。
ちょっとした気遣い、そして詮索、それらは誤解を招き、不信感が増幅していく。
思っていること、悩んでいること、思いやっていること、解かってほしいこと。。
それぞれが「なぜわかってくれないのか」との期待と「どうせ他人だから」の冷めた心のなかでスパイラルダウンしていく。
いじめられていることを親に相談できない少年。
家族に心配を掛けたくないからと隠した秘密。
新たな命を体内に感じて嬉しさと惑いのなかで揺れる気持ち。
それぞれの悩みや考えは素直に読み取れる。
そしてこの作品で感じたのは、本当の自分をOUTPUTすることの難しさだ。
自分にもこんなことがあるかもしれない、と思った。。。
思っているることを口にしたら、全然違う伝え方になってしまったり、
うまく自分の気持ちを言葉にできなかったり、
どうせ解らないだろうから、話すことを辞めてしまったり、
本当に聴いて欲しい気持ちを受け止めていなかったり。。。
解り合う、理解し合う、解ってくれると信じる。。そして解ってあげる。
そんな信頼や優しさやいたわりの大切さを読み取らせていただいた。
それにこの作品に描かれているイジメのゲームは以前このブログで書いた「無視」 とそっくりだったしね。
期待しないで読んだけど、いい作品だった。