煉獄の中で | 毎日釣りのことばかり・・

煉獄の中で

会津金山町の鉱山も、あえなく閉山した。
父の勤めていた会社は、鉱石の産出を海外にもとめたからだ。
結果、父はアフリカへの長期海外赴任を強いられることになる。

で、ボクが中学1年の3学期にはまた思いで深い金山町を去ることになった。

次の引越しの地は、東京都田無市(現西東京市)。
住まいはまた会社の社宅だけど東京だから3Kの狭い団地だった。

転校したはもちろん学区内の中学。

数年前と同じように、新しい担任の先生から「○○くんです。みんなヨロシク」
と紹介された。

用意された席につく。
驚いたのは、前に座っていた女の子が振り向きざま「私、川本弥生(仮名)、ヨロシクね」
と微笑んできた。メチャかわいい。

見渡すと、東京の中学生女子はみんなかわいく見えた。
おしゃれだし、髪は整ってるし、そう、垢抜けて見えた。
そりゃしょうがないだろ、会津の山奥でサルみたいな連中に囲まれてたんだから・・。

田舎から出てきたボクは、まず、馬鹿にされないように気をつけた、つもり。
ちょっと斜に構えたかも知れない。

イロイロいやなことはあったけど、イジメることも、イジメられることもなく、中学3年生になった。

このころは、夏目や鴎外や白樺派の山本有三なんかを読んでいた。
いつ頃からか知らないが、読書はボクの趣味になっていた。

宮本賢治、高村光太郎などの詩集も読んだ。
なぜかって、、それはそれがカッコよく思えたからでもある。

同級生に、これもかわいい多美さんって言う子がいた。
伊藤左千夫の「民さんは野菊のようだ」にぴったりの女の子だ。
恋をしたわけではないが、彼女は休み時間中、いつも文庫本を読んでいた。

何を読んでいるのか、聞いてみたところ。
ソルジェニーツィンの「 煉獄の中で」
ソルジェニーツィン 「煉獄の中で」 全2巻


だった。

共通の話題を持ちたかったボクは、早速その本を買い求め、読んでみた。
さっぱりわからない。

教室の中で、さりげなく自分の席でソルジェニーツィンを読み耽る少女。
ドキドキした。
でも、当時のボクにはソルジェニーツィンは、読了できなかった・・。

もちろん、卒業後、「野菊のような君なりき・・」に合う機会も・・残念。