東野圭吾「手紙」

近々ロードショー公開される「手紙」 の原作を読了した。
毎日のように報道される様々な犯罪。
日ごろニュースでしか接しない凶悪な犯罪。
それらにはその代償が根深くその関係者に刻まれることをこの作品は教えてくれる。
犯罪の直接的当事者、加害者は社会から隔離され贖罪への道へ。
被害者は時にはこの世からの存在をなくす。
では、加害者の肉親は、、、強盗殺人犯人の弟は。
差別や偏見から自分を、そして自分の大切な存在や夢を守る弟の苦悩がこの物語に綴られている。
そして被害者の肉親は。
小さな事件の被害者となることで初めて知る対岸の気持ち。
憎しみや悲しみを昇華できない遺族。
悔やんでも、憎んでも償いきれない犯罪を肉親が起こした事実。
それでも、これからの道、進むべき方法を主人公は掴みつつこの物語は終わってくれる。
そこが不幸な青年の物語を読ませられながら読了後に少しだけさわやかな感触を残してくれた。
そして、ボクを含めた読者が位置する「世間」。
個々の反応、、偏見や差別を「ひどいこと」と一言で片付けられないほど現実的に綴られていることがこの作品の一番評価できる点だろう。
不幸を背負った青年の物語、重松清の「疾走」 については過去にこのブログで書いたが、この「手紙」には「疾走」には全くない少なからずの「救い」があったことも付け加えておく。
映画は多分、DVD化されてから観るだろう。
山田孝之と沢尻エリカの演技が楽しみでもある。
それにしても、東野は「ハズレ」のごく少ない作家だ。