イスラエルと聞くと、苦い思い出が蘇る。
もう30年近く前、ニューヨーク出張で
現地アメリカ人クルーと
いよいよロケ開始と言う当日、
同行してくれる事になっていた
現地の白人女性リサーチャーと
待ち合わせ場所で会った途端,
彼女は初対面の私の顔を見るなり、
「 私たちのラビンがぁぁぁ…!」と
言ったかと思うと泣き崩れた。

当時私は35歳。
イスラエルの知識も関心もゼロ。
かろうじて”私たちの” と
“ラビン”が聞き取れたので、
イスラエルで暗殺らしき
大変な事が起きたことは何とか理解したが、
彼女はおいおい泣いてばかりで、
仕事にならない。
私も何と慰めて良いのやら。
アメリカ人ドライバー、
カメラマンとライトマンは困った顔。

今思い出しても、あの時の出張、
何の撮影だったのか?思い出せない。

とにかく、Jewish ユダヤ人だった銀髪の、
同世代の彼女にとって、
ラビン首相の暗殺は
大変なショックだったのだろう。
私はもし日本で首相が暗殺されたとしても、
ここまで一般人が取り乱して
泣くのだろうか?とただただ驚いてしまった。

アメリカには500〜750万人の
ユダヤ人が住んでいると言われている。
私のリサーチャーは
たまたまその当時のユダヤ人の
一人だっただけにすぎないけれど、
アメリカは”アメリカ人”だけの
国ではない事を実感した。

その後、彼女とはしばらく
メールのやり取りをしていた。
が、すでに30年近くが経ってしまった。
今回の事態を
彼女はどう見ているのだろうか。
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