平成最後のハロウィン、

平成最後の文化の日など、

来年春の天皇陛下のご退位を控えて、

「平成最後の」イベントが目白押しだ。

 

私は天皇陛下がご退位される節目を

こんなにもたくさんの国民が心に刻み、

思い出を作っていることを

心から羨ましいと感じている。

 

うちには89歳の舅

84歳の姑がいる。

恐れ多くも天皇ご一家と比べるわけではないが、

うちの夫は59歳で、皇太子と同い年だ。

一人娘は愛子さまより半年遅く生まれた。

つまりうちのファミリーは

年齢構成がなんとなく似ているのだ。

 

兼ねてから困っていたことがある。

舅がいつ引退するのか?

そして夫が一家の大黒柱になるか?である。

 

昭和四年生まれの舅は元役人で、

名簿上はまだある組織の役員として名を連ねている。

ネットで検索するとまだ出てくるのだ。

「名誉職」ということで報酬はないものの、

「肩書き」は残っている。

 

そして一人っ子である夫は

もう来年は還暦だというのに、

いまだに「息子」であって

家族のトップではないのだ。

 

これは嫁の私から見ると

夫の自立心やら責任感に少なからず影響を与えている。

いつまでも夫は「極楽とんぼ」なのだ。

私と高校生の娘を養っている意識がとても希薄だ。

そして今後、年老いた親をどうするか?についても

夫は全く決断が出来ない。

いい歳したおっさんなのに、

「息子ちゃん」を演じ続けようとしている。

 

実は内心、陛下の御宅も

皇太子が還暦になるまで「息子」だから

お気の毒だと思っていたのだ。

だから天皇陛下がご退位を決められた時、

自分のファミリーの事のように喜び、

安堵し、そして心から感心した。

 

人間、現役をいつ引退するかを決めるのは難しい。

もちろんいつまでも若く、元気でいたいし、

社会の一員であり続けたいものだ。

もちろんたくさん働いて、

早く引退したい方も中にはいるが、

「生涯現役」を貫きたい人がほとんどだろう。

俳優さんはステージの上で死にたい、と

よく言っているし、

多くの人が「ピンピンコロリ」を望んでいる。

 

本来なら、天皇陛下がご崩御されたら

皇太子が即位するというのが習わしだ。

そこを天皇陛下は自ら退かれることを決めて、

息子である皇太子に、ご自分の存命中に

天皇陛下としての地位を全面的に譲るわけである。

なんと清々しい。

 

うちは一般家庭であり、地位はないので、

天皇ご一家のような「バトンタッチ」の時期が

決められない・・・。

経済的には息子の方が稼いでいたとしても

「一家の長」は89歳なのである。

どんなにヨボヨボでも、死にかけでも

父は父だ。

 

兼ねてからこの舅の「終活」には大変に悩んでいる。

シングルプレーヤーだった時期もある舅は

85歳までゴルフをやめなかった。

100を切れなくなってようやく諦めた。

運転をやめたのは87だった。

これも自動車の四隅に傷が入り、

世の中に道路を逆走するお年寄りが増えてきたニュースを見て、

本当に、しぶしぶ免許を返納した。

 

先日は突然、夜中に呼吸困難に陥り、

救急車で搬送していただきたのち、

二週間も入院して一命をとりとめたばかりだ。

ところがまだ頭がボケていないし、

なんとか杖をついて歩けるところまで回復した。

つまり、また「世代交代」が遠のいてしまったのだ。

 

ここ数年はクリスマスごとに、

最後になるかもしれないから

ちょっと大きめのケーキにするか、とか

最後になるかもしれないから

おせちは豪勢に、とか

「最後かも?」状態が連続している。

先日は舅を85キロ離れた実家に

久々に連れて行ったのだが、

玄関の上り口が昔の家なので、

30センチくらいあり、

舅はもう足が上がらなくなっていて、

結局、座敷に上がれなかった。

甥と二人で脇から抱えようとしたが、

自力で上がれなかったショックもあったのだろう。

舅が「いいよ」とポッっと言ったので、

手を貸すのをやめた。

 

要するにいつが本当の最後だかわからないので、

これが最後かも

今度が最後か?

あれ?これが最後かな?という状態が

気づいたら延々と

数年にわたって続いているのである。

 

嫁としては、これは正直疲れる。

 

財産分与についても

葬儀の場所や形式についても

うちの極楽とんぼ息子ちゃんは

自分の父親と話し合ってこなかったために

89でヨボヨボになってからでは

逆にな〜〜んにも聞けなくなってしまったのだ。

 

元気な親だからこそ

「どんな葬儀がしたい?」とか

「誰を呼びたい?」みたいなことも

冗談めかして聞けるのだ。

 

老人ホームについても実は困っている。

寝たきりになった時、

息子や孫がいるここの家の近くのホームがいいのか?

たくさんの幼なじみや兄弟、親戚がいる

生まれ故郷のホームに入りたいのか?

 

こんなことすら、嫁は聞けない。

 

当たり前ですが、

うちは天皇家のようにはすっきりといかない。

 

終わりが近づいていることに

気づかないふりをして

とりあえず

「舅はまだ現役」

「舅はまだ元気」を演じてあげるのだ。

「死」とか「終わり」とか

うっかり口に出さないように気をつけながら。

 

天皇陛下が

ご退位を決意されたのには

心から敬意を表したいし、

きっと皇太子も

自分の時代がいつくるのかはっきりしたことで

心の準備もお出来になったでしょうし、

公式に全てを引き継ぐことの

安堵もおありになることでしょう。

こういう「終わり」こそめでたいし、

すっきり清々しい。

きちんとした締めくくりになる。

 

うちはしばらく

「この冬が最後かなぁ」状態が続く。

春まで持ったら

「この猛暑に耐えられるかなぁ」とまた続く。

 

せめて自分の時には

生前葬でも盛大にやって、

美しい引き際を目指してみたいと

切に願っているダメ嫁な私です。

 

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