NHKに入って4年目が終わろうとしていた

年明けのある日

突然の業務命令で、

私は総合テレビ夜9時の

「ニュースTODAY」の

キャスターに選ばれました。

 

その時、どういう風に告げられたか?

実はほとんど覚えていませんが

担当のCP(チーフプロデューサー)は

恐らく私があまり

お好きではなかったのでしょう。

「評判が悪かったら

すぐに降りてもらうからな」と

冷たく言い放たれました。

が、二年間、担当させていただきました。

 

かなりあとで聞いたのですが、

私をキャスターにしたのは

当時の2人の理事だったそうで、

きっとCPにしてみれば

自分のイメージにあった女性アナを

自分でキャスターに

抜擢したかったに違いありません。

 

が、トップダウンで

ド素人の私になりました(笑)。

私は女性記者の二期生ですので、

NHK記者の女性キャスターとしては

第1号なんですが、

アナウンサーとしての訓練は

全く受けていませんでした。

 

夜9時のニュースは当時の

NHKにしてみたらまさに看板です。

メインキャスターは平野次郎さん、

国際派の記者の先輩です。

同じ番組には

橋本大二郎デスク

(記者・元高知県知事・現在テレ朝キャスター)

国谷裕子さん

(フリーキャスター・のちのクローズアップ現代キャスター)

福島敦子さん

(フリーアナ・のちに妹さんがイチロー選手とご結婚)

おまけに当時のデスクは

池上彰記者(ご存知あの池上さん)という

蒼々たるメンバーでした。

 

さぁ〜北九州生まれ、

国内あちこちを点々として

いろんな方言の先生に教えてもらった上、

10代のほとんどを海外で過ごした

無国籍な私です。さあ困りました。

アクセントがどことなく違う・・・

 

例えば「あかいはな」のイントネーションは

標準語では

_ーーーー なのですが (最後まであがる)、

北九州では(という私は)

_ー__ー なのです。 (上下する)

 

それに関東には「鼻濁音」というものがある。

私が、という時、「が」が鼻にこもるのです。

わたしんが、と言っているような感じですね。

ちょっと失礼ですが、

つまり・・・瀬川瑛子さんみたいな・・・

 

私はこの鼻濁音を全く知らなかったので、

明るく「が!」を連呼していましたが、

放送人は「んが」と言わないといけないのでした。

(ただし学校など冒頭の「が」は普通に発音します)

 

実はNHKの採用試験では

アナウンサーもうけているんです。

途中からは日程が重なり記者を選択しましたが、

最初のうちのマイクテストでは

「う〜ん、君のアクセントは独特で

修正しようがないなぁ・・・」と

当日の試験官が嘆いたほどの癖です。

 

でもまだ当時の私には

アナウンスの基礎を自力で学ぶような

知恵がなくて、ただひたすら

一生懸命読んでいた気がします。

 

日本語のアクセントを修正したのは

自分が英語のキャスターを始めた40代でしょうか。

私は入局16年目に

これまた突然の業務命令で

「きみ、確か英語できたよね?」の一言で

海外向けの英語の国際放送の

ニュースキャスターを命じられました。

英語は自分で学んだ言葉なので、

発音に気をつけます。

が、日本語はあまりにも自然すぎて、

いちいち教科書通りのイントネーション、

気をつけないですよね?

 

逆に英語を正しく発音して

標準語のイントネーションを真似しようと思うと、

本当に辞書を頻繁にひいて

アクセントの位置を確認する必要があるんです。

同じ単語、例えばアドレスという単語は

名詞では「ア〜ドレス」(住所)ですが、

動詞では「アドレ〜ス」と

(人に宛てる、講演する)

アクセントの位置が変わりますよね。

 

最近はおかげさまで、私も

日本語と英語を両方使うような司会の仕事もあり、

どちらの言語を使っているときも、

アクセント辞典と同じように

正しいアクセントで話す事を

心がけています。

 

やっと慣れてきました・・・

遅いですか(笑)。

 

若い頃のVTRを見ると、稚拙で・・・

見ていられないので、そのまま山積みです。

 

後輩たちのリポートをテレビで見ていて、

姿勢やアクセントが違っているときは

遠慮なく言う事にしています。

大概の記者は今の若い人のしゃべり方同様、

語尾を伸ばします。

私はいまぁ〜津波のぉ〜被害がぁ〜

起きた現場にぃ〜来ています〜。

みたいな。

 

緊張感なし😱。

 

キャスターやフリーアナを目指しているアナタ。

とにかく語尾を伸ばしてはいけません。

だらしなくなります。

例えば

私は今、津波の被害°が(ここで鼻濁音)

起きた現場に

来ていまス。最後のスは軽く。

ですね。

 

時々中継現場から

慌てふためいて記者いますけれど

気持ちはわかるけどみっともない。

「つく、机の上の物が、さ、散乱していますー!」

って、画面見りゃわかるって。

「台風による強風によってー

木の枝が飛ばされそうになっていますー!」

って、君が飛ぶぞ(怒)(爆)。

 

NHKでも他の民放さんでも

アナウンサーがニュースを読むのは当然ですが、

記者が通称「板付き」と呼ばれる

定時ニュース番組のキャスターに抜擢されることは

そうそうある事ではありません。

同期が3〜40人いても

1人かせいぜい2人でしょう。

 

わずか入局5年目の記者の私が

なぜNHKの歴史初の

キャスターをさせてもらえたのか?

40過ぎて、

また英語のキャスターに復活したのか?

どういう運命の巡り合わせか?わかりません。

 

でもそのお陰で、MXTVの

オーディションで

リポーターという肩書きをいただいたり、

この有Amebaさんの

名人ブログの端くれとして

こうやって書かせていただいています。

記者という本来は地味な職業についたはずが

ラッキーだったのかもしれません。

 

四半世紀前、

私をキャスターに選んで下さった

2人の幹部、まだご存命です。

今頃になって感謝しています。

近いうちにお礼の気持ちを

伝えなくてはと思っています。

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