築地の寿司屋で「最後の晩餐」のあと

暗い道を病院に戻りました。

とぼとぼ、という表現がぴったりな歩調で。

 

病室に入ると

「明日は検査だけですから〜」みたいな感じで

看護師さんに明るく言われて、

付き添いは病院に全ておまかせして

早く帰りましょう的な、空気になりました。

そうです。こういうとき、

妻にすら出来ることは特にないのです。

本人を励まそうがどうしようが、

戦うのは本人でしかない。しかも47歳のおっさんですもん。

 

手術当日、

まだ3歳10ヶ月の娘を預け、

暗〜い表情の舅姑ともに、

手術室の近くにある待合室で

手術が終わるまで待つ事になりました。

(こういう家族のための場所があるんだ・・・)と思いました。

他にふた家族ほどいらっしゃいました。

全員、だまぁ〜〜って、静かに座っているわけです。

 

手術中に亡くなる人もいるでしょうから、

家族によっては、ここで最悪の一報を受けるのかも・・・

などとよからぬことも頭をよぎります。

予定時間を1時間ほど過ぎたころ、ICUに呼ばれました。

 

いろんな機器に囲まれて、何か管みたいなものもついていて

夫は仰々しい姿になっていました。

あぁ〜やっぱり、本当にガンだったのね・・・

ドラマによく手術シーンがありますけれど、

本物の迫力が違うのは言うまでもありません。

 

ーーーー本当に生きられるのかしら?

 

このあと舅姑とどんな風に家に帰ったのか?

全く記憶にありません。

当時はすでに管理職として

NHK国際放送の英語ニュースデスクをしていました。

夫の代わりに稼ぐためにも

会社を休まずにどうやって介護をすればいいのだろう?

ラッキーに何とか生きられてたとしても

寝たきりになるであろう介護生活は

一体、いつまで続くのだろう?

 

頭の中が思考停止してしまっていました。

 

ところが名医ドクターSは明るく言うのです。

「10日ほどで退院ですから〜」

 

はぁ?こんな重病人、病院から出られるんですか?

そんなに早く?

 

自分、

37歳のときに首にリンパ節に感染を起こし

高熱が下がらなくなって

12日間も入院したことがあるんです。

(このときの波乱万丈はまた後日)

手術なしの自分の入院より

胃を取っちゃう夫の入院のほうが短いの??まさか〜〜

 

おまけにひとつ問題がありました。

夫が手術を受けたの2月16日のおよそ二週間後、

母の70歳の誕生日の3月1日に、

弟が挙式❤️することになっていたのです!!!。

それもハワイで・・・💧。

 

夫の胃がん手術と弟の結婚式が見事バッティング。

でも、さすがに親にも言いだせず・・・

しらばっくれるしかない・・・・か。

 

でも40すぎてやっとこさ

綺麗なお嫁さんに来てもらえる弟の

(嫁はグルメライターでAbema TVスタッフの大村椿です)

挙式に行けないとは言えないしなぁ・・・

 

夫をしばらく舅姑に任せられるか?

幸い二世帯住宅だし、

どうせパックされた水みたいな

流動食しか食べさせられないし・・・

 

おそるおそる私はドクターSに聞いたのです。

「あのぉ〜〜3月1日からハワイに行ってもいいでしょうか?」

 

ドクターは明快に、

「お姑さんに任せていいんじゃないですか〜」と。

 

舅姑もさすがに「弟の結婚式に行くな」とは言えなかったんでしょう。

私は結婚式でフラワーガールになる娘を連れて、

晴れて?成田空港で母と合流したのでした。

 

いよいよ飛ぶぞとなった時、

「実は・・・」とカミングアウトすると

母は「そんな大事なこと、何で黙っていたの〜」と泣き始めました。

(親不孝だったかしら・・・)

 

ハワイ島の浜辺でフラダンスの神みたいな人が夕暮れの中で踊って

ピンクのドレスを来た3歳11ヶ月の娘がお花を撒きました。

 

スレンダーなドレスがとても良く似合うお嫁さんで、

私はず〜〜〜っとビデオを撮り続けました。

 

楽しくハワイで予定通り一週間も過ごした私は

帰宅して超びっくり。夫意外に元気(笑)。

あれ?寝たきりじゃなかったの??? 

うわぁ〜〜いハワイ行き、やめなくって良かった〜〜❤️

 

追伸:

 

ひとつ前の(3)で、

全ての皆さんに検診に行って欲しい、と書きました。

これはすべての早期発見のがんが

「治る」ということではなく、

(もちろん治ってほしいけれど)

ガンのタイプや患者の体質などによっても

残念ながら違う事は明白です。

でも、だからこそ、きちんと検査して、

少しでも治療の時間を確保したほうが良いのです。

ちょっとくらい放っておいても大丈夫、

なんて思わないて、

面倒がらないで、

検診にはぜひ行きましょうよね。###