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1ドル=160円迫る円安受け、日銀は物価上振れリスク高まると判断も
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植田総裁は来春闘の初動の勢い重視、1月に利上げ先送りも排除せず
元日本銀行理事の門間一夫みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストは、足元の急速な円安進行を踏まえ、日銀が12月の金融政策決定会合で追加利上げを決める可能性が高いとの見解を示した。
門間氏は25日のインタビューで、日本経済が日銀の見通しに沿って推移する中、ネガティブなニュースが起きず、「円相場もこのくらいということであれば、12月の利上げの可能性は結構高い」と語った。1ドル=160円に迫る円安を受け、日銀は物価の上振れリスクが高まっていると判断することもあり得るとの見方を示した。

元日銀理事の門間一夫氏
Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg
こうした日銀の金融政策運営は、物価高対策を最優先とする高市早苗政権の方針とも矛盾しないという。高市首相と植田和男総裁が18日に初会談するなど政府と日銀のコミュニケーションもとれているとし、「物価高対策の最大の敵」である円安の是正に向けて日銀が利上げで対応することを政権も許容するとみている。
日銀が政策金利を現行の0.5%程度から0.75%程度に引き上げる時期について、足元の金利スワップ市場では12月会合の予想が約35%。来年1月会合を含めると約85%に達する。市場が早期利上げを見込む中で、門間氏は円安を踏まえて最も早いタイミングを有力視している。

片山さつき財務相は21日の閣議後会見で、円安進行は一方的で急激とし、為替介入は選択肢として「当然考えられる」と言及した。植田総裁も同日の衆院財務金融委員会で、円安の物価への影響を注視していくとし、「基調的な物価上昇率に影響する可能性にも留意しないといけない」と語った。
植田総裁が利上げ判断において、来春闘に向けた「初動のモメンタム(勢い)」を重視する見解を表明している中で、年始の経営者の発言や支店長会議などを見極めるのが最も安全だと門間氏は指摘。来年1月に利上げが先送りになる可能性も排除はしていないと述べた。
日銀内の政策議論を巡っては、高田創氏と田村直樹氏の2人の審議委員が9月に続いて10月会合でも政策金利の維持に反対し、0.75%程度への利上げを提案した。今月に入り、小枝淳子審議委員と増一行審議委員も講演やメディアとのインタビューで利上げに前向きな見解を表明している。
植田総裁が12月に利上げを提案すれば、9人の政策委員全員が賛成するだろうと門間氏はみている。一方、総裁が来年1月まで待つという判断をした場合、既に反対票を投じている2人を除き、他の政策委員は政策維持を支持するだろうとの見方を示した。
12月の決定会合は18、19の両日開かれる。植田総裁は来月1日に名古屋市で講演と記者会見を行う予定で、追加利上げを巡る総裁の発言が市場の注目を集めている。

Source: Bloomberg Economics; Photos: Bloomberg, Bank of Japan, Senshu