中国3中全会 改革の本質が問われる | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

きわめて説得的。

 

もっとも、同社説は我が国も中国のように、

自由と競争を基本とする市場資本主義ではなく、

国家が市場を統制する国家資本主義を志向している

という意味では大同小異であり、

同じ穴の狢の長期衰退への道を走ってきていることに

気付いているのだろうか。

 

いずれにしても、ご参考まで。

 

 

いくら「改革」の言葉を多く連ねても、かけ声倒れに終われば一層の停滞は避けられない。中国の習近平(シーチンピン)政権に問われているのは、経済の活性化と国民生活の向上をどう導くかである。

 

 中国共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)が18日まで開かれた。最終日に発表されたコミュニケ(声明)には「改革のさらなる全面的深化」にかかわる方針が盛り込まれた。

 

 5年に1度の党大会で指導者を選ぶ共産党は、大会直後の中央委員会で党人事、2回目で国家機構人事を決め、3回目の3中全会で政策の方向性を打ち出すのが通例だ。

 

 過去のいくつかの3中全会は、計画経済から市場経済に向けた改革を進める転換点として記憶される。1978年の3中全会は改革開放路線の起点とされ、93年は「社会主義市場経済」への取り組みを本格化させる契機となった。

 

 今回、約5千字のコミュニケには「改革」という言葉が53回も登場する。だが、どこまで改革の名に値する政策が今後打ち出されるのか、疑問も拭えない。

 

 現下の焦点は、不動産不況を主因とする中国経済の低迷である。これは足元の短期的問題にとどまるものではない。土地収入が激減して地方政府の財政危機が表面化しており、本格的な税財政改革も不可避だからだ。

 

 コミュニケでも不動産と地方債務、中小金融機関を「重要なリスク分野」と位置づけているが、新たな方向性は示されていない。

 

 また、深刻な少子高齢化に直面する中、全国民に対するカバーがまだ不十分な社会保障制度をどう改革するかも、示されるべき重要課題だ。

 

 一方、コミュニケには、改革の全体目標は国家統治の仕組みを現代化することと明記された。共産党による支配体制を揺るぎないものにすることが改革の目的といわんばかりだ。

 

 習政権1期目の2013年の3中全会は市場ルールの確立・徹底を打ち出し、内外で期待を集めた。だが改革メニューの大半は実行されなかった。それどころか、国有企業部門が合併などを通じて強化され、民間企業は政権の都合でしばしば抑えつけられた。

 

 その後の習政権は、経済発展より国家安全を重視する道を歩んだ。それが、今回の3中全会を経て3期目の政権で踏襲されることを危ぶむ。

 

 自由で活力ある経済を発展させ、14億の人々が安心して生活できるようにする。その方向性こそ、真の改革にふさわしい。