トランプ前米大統領銃撃は民主主義脅かす蛮行だ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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トランプ前米大統領銃撃のような政治家を標的にした襲撃事件が世界で頻発している=AP

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

トランプ前米大統領が演説中に銃撃され、負傷した。共和党がトランプ氏を党の大統領候補に正式に指名する全国大会を間近に控えての事件である。暴力で言論を封じようとする蛮行は民主主義への挑戦であり、絶対に許されない。断固として非難する。

 

トランプ氏は「銃弾が右耳の上部を貫通した」とSNSで説明した。命に別条はなく、党大会にも参加する。現場となった選挙集会の参加者1人が死亡し、2人が重傷を負ったのは残念というほかない。容疑者は射殺され、当局は暗殺未遂事件として捜査している。犯行の動機や思想的な背景をつまびらかにしてほしい。

 

銃弾で命を失ったケネディ大統領をはじめ、米国の大統領は常に暗殺の危険にさらされている。トランプ氏のような大統領経験者にも大統領警護隊(シークレットサービス)が厳重な警護にあたる。集会への入場は身体検査や荷物への入念なチェックがあるが、今回の発砲は会場の外からだった。警備体制を点検し、必要ならさらに強化しなければならない。

 

事件後に民主党のバイデン大統領がトランプ氏と電話で話し、テレビ広告の一時停止を決めたのは適切だ。11月の大統領選を前に国民の分断が深まっている。民主主義を脅かす危機には一時的にせよ対立を乗り越え、一致して対処する姿勢を示すのが望ましい。

 

民主党は多数の死傷者を出したトランプ氏の支持者による連邦議会占拠事件を非難してきた。トランプ氏は襲撃者を擁護する発言をしたり、共和党にも占拠事件を軽んじたりする向きがあった。今回の事案をこれらの言動を再考する警鐘ととらえるべきではないか。

 

米国の世論調査をみれば、トランプ氏再選を阻止するのに暴力に訴えてもよいと考える人が一定数いる。今回の事件にこうした背景があるとしたら極めて問題だ。

 

世界を見渡せば、政治指導者を力で排除しようと試みる凶行が頻発している。1月に韓国の最大野党代表が、5月にはスロバキアの首相が襲撃を受けた。6月のメキシコ大統領選や議会選では数十人もの候補が殺害された。

 

安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、岸田文雄首相が襲撃された日本も例外ではない。政治的な主張を力で抑え込もうとするような危うい風潮の広がりを食い止めるにはどうすべきか、真剣に考えなければいけない。