掲題の今朝の読売社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
イラン国民が、自由の抑圧や、国際社会での孤立を招いた強硬路線からの変化を強く求めた選挙結果と言える。
イランの大統領選は決選投票で、米欧との対話や女性の権利尊重などを訴えた改革派のマスード・ペゼシュキアン氏が初当選した。改革派の大統領はハタミ師以来、19年ぶりだ。
選挙は、保守強硬派のライシ前大統領がヘリコプター墜落で急死したことを受けて実施された。80人が立候補の意思を示したが、出馬できたのは6人で、ペゼシュキアン氏以外は保守派だった。
にもかかわらず、知名度が低かったペゼシュキアン氏が当選した。現体制に対する人々の不満の強さを浮き彫りにしている。
イラン経済は米国の制裁で、年平均40%前後の物価上昇が続く。国民は苦境にあえいでいる。
2年前には、髪を隠す布「ヘジャブ」の着用が不適切だとして拘束された女性が変死し、反政府デモが各地に広がった。当局は武力鎮圧し、多数の死傷者が出た。
大統領交代は、政策を転換し、 閉塞
感を打破する好機である。しかし、実現は容易ではない。
国政の最終決定権を握るのは、最高指導者ハメネイ師である。選挙後も、これまでの路線を継続するよう新大統領に求めた。
だが、有権者は社会の改革を強く求めている。民意を尊重しなければ不満や失望は高まり、体制を不安定化させるのではないか。
対外政策では、核開発問題が焦点となる。イランは2015年に米英仏など6か国と、核開発を制限する見返りに経済制裁を解除する核合意を結んだ。だが、米国のトランプ前政権が離脱を決め、核合意は機能不全に陥った。
イランがこの間、核兵器の材料の水準に近づけるまでウラン濃縮を進めたことは看過できない。
ペゼシュキアン氏は、核合意の再建を目指すと表明している以上、その一歩として、濃縮を核合意の範囲内まで縮小すべきである。国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れなど、透明性を高める努力も求められる。
イランはイスラエルと敵対している。パレスチナ自治区ガザのイスラム主義組織ハマスを含む、中東地域の反イスラエル武装勢力を支援している。自国を取り巻く緊張の緩和を目指すなら、軍事支援を控えなければならない。
日本はイランと良好な関係を維持してきた。新政権に対し、国際社会から孤立してイランの繁栄はないことを説き続けたい。