じもとHDの「国有化」 金融不安招かぬ処方箋を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の毎日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

   日銀のマイナス金利政策の解除が銀行経営に大きな影響を及ぼしている。金利の上昇で大手行が収益増の恩恵を受ける一方、苦境に陥る地銀も出ている。

 

 山形県の第二地銀、きらやか銀行を傘下に持つ、じもとホールディングス(HD)が事実上国有化された。2024年3月期に巨額の赤字を計上し、株式配当を見送った。公的資金による資本注入を行った国が議決権の6割超を握る最大の株主となった。

 

 きらやか銀はリーマン・ショックや東日本大震災の際に公的資金注入を受けている。その後、宮城県の第二地銀、仙台銀行と経営統合し、じもとHDを発足させたが、顧客基盤や収益力の強化にはつながらなかった。

 

 取引先企業の破綻などで損失が膨らむ中、昨年9月にはコロナ禍で打撃を受けた中小企業を支援する名目で、公的資金180億円を追加注入されている。支店の統廃合などリストラも進めたが、財務体質は脆弱(ぜいじゃく)なままだった。

 

 先行きも厳しい。日銀が利上げをしても、貸出金利を引き上げるのは難しい。経営体力が弱い取引先企業の倒産の引き金となり、貸し倒れによる損失がさらに拡大しかねないからだ。

 

 一方で、個人顧客をつなぎ留めるため、預金金利は引き上げざるを得ず、採算が悪化している。

 

 地銀の使命は、経営の健全性を保ち、地元企業に円滑な資金供給を行うことだ。国の管理下では、経営の自由度が下がり、新規融資もままならない。地域経済を支える役割を果たせなくなる。

 

 じもとHDは仙台銀行の分も含め計780億円の公的資金を抱えており、返済する必要もある。他行との再編などあらゆる手立てを講じ経営再建を急ぐべきだ。

 

 金融庁の責任も問われる。じもとHDは昨秋に公的資金が入ってから1年もたたないうちに経営危機に陥り「国有化」された。金融不安の芽を摘むはずの政策が逆の結果を招いており、監督が不十分だったのは明らかだ。

 税金を原資とする公的資金を注入されている地銀はほかにもある。じもとHDのケースを他山の石として「金利のある世界」に向き合い、経営の手綱を締め直さなければならない。