大学授業料 公費支出増へ議論急げ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

 

かなり説得的。

 

もっとも、授業料問題いかんにかかわらず、

我が国の大学は質向上と、

大学間競争によって、

国際競争力を一段と引き上げることが大前提となろう。

 

 東京大が来年度の入学者から、学部と大学院の授業料を年11万円値上げする方向で検討している。教育・研究の国際化やデジタル化を進めるためと説明するが、背景には最近の財務状況の悪化がある。

 

 国は、国立大で教職員の人件費や研究費に使われる運営費交付金の配分を減らしてきた。各大学は支出削減や外部資金獲得を進めるが、光熱費や物価の高騰もあり収支悪化は止まらない。東大で値上げが実現すると、他の国立大などにも広がる可能性がある。

 

 値上げで進学を断念する人が増えれば、当人ばかりか社会にも不利益が及ぶ。国際的にも手薄な高等教育への公費や民間資金の投入を拡大するための議論を、社会全体で早急に始めなければならない。

 

 国立大の授業料は、文部科学省が定める標準額の1・2倍を上限に各大学が決める。標準額は05年度から53万5800円で、学部は18年度まで全大学が同額だった。現在は教育・研究の高度化などを理由に、東京工業大など6大学が約2割引き上げている。

 

 各大学は、企業との共同研究や寄付などで収入を増やす一方、施設の整備などで支出も増加。有期雇用の教職員を増やし、設備更新を遅らせるなどしてしのいできた。

 

 だが、国立大学協会が財務状況は「もう限界」と悲鳴を上げる声明を出す事態に。日本の将来を揺るがしかねず、国は運営費交付金の増額など早急に対策に動くべきだ。

 

 国立大の大きな使命は、比較的安い学費で質の高い教育を提供することだ。だが日本学生支援機構によると、学部生の少なくとも35%が奨学金を利用する。授業料改定は、学生も含め社会の声を幅広く聴いて考える必要がある。

 

 値上げに踏み切る大学には、最低でも経済的な支援の拡充を求めたい。国も給付型奨学金などでの支援対象を、中間層の学生にまで広げる政策を急がなくてはならない。

 

 ただ、個々の学生から見れば、奨学金や授業料減免が利用できるか確実でない場合もある。支援策があっても安易な値上げは許されない。

 

 国立大の授業料をめぐっては、慶応義塾の伊藤公平塾長が40年時点で150万円に引き上げることを提案した。その本旨は、大学が世界水準の教育を行うため、国に支出を増やすよう求めたものだ。

 

 それを実現させるには、国公私の各大学が、存在意義をもっと社会に訴えることも重要だ。卒業生の活躍や研究成果、地域貢献の蓄積をアピールし、地元や学生の保護者らの応援の機運を高め、国を動かすうねりを作りたい。