掲題の今朝の毎日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
政権の延命を狙うあまり、人気取り策を強引に進めれば、矛盾が露呈するのは当然である。
岸田文雄首相が、物価高を受けた経済対策をまとめると表明した。国民の負担軽減につながるメニューを並べたが、つじつまの合わない内容が目立つ。
最も理解に苦しむのは、5月分で終えた電気・ガス代への補助金を8月分から3カ月間復活させることだ。唐突な方針転換である。
ガソリン代への補助を年内いっぱい続けると決めたのも問題だ。
2022年1月に一時的な措置として導入したものだが、延長を繰り返してきた。化石燃料への依存が続き、政府の脱炭素方針に逆行する。
自治体への交付金拡充も実効性に疑問符がつく。地域産業などの支援に幅広く活用するというが、便乗して、物価高対策とは無縁の事業に使われかねない。
首相が生活支援策の目玉としてアピールしてきた定額減税は、今月始まったばかりだ。にもかかわらず、新たな対策を打ち出すのは、自らの政策の効果を否定することになるのではないか。
深刻な借金財政を巡る対応も矛盾しているようにしか見えない。
首相は健全化目標を25年度に実現する考えを「骨太の方針」に盛り込んだ。だが今回の対策では、予備費の活用に加え、補正予算の編成も検討されている。規模が膨らめば、目標達成は難しくなる。
首相は自民党派閥の裏金問題で改革の明確な方向性を示さず、支持率の低迷が続く。党内からは交代を求める声が相次いでいる。
9月の自民総裁選に出馬の意欲をにじませる首相が、求心力を保つ手段として経済対策を持ち出したとみられても仕方がない。
政治的な思惑を優先して大盤振る舞いに走れば、将来世代につけを回すことになる。それではあまりにも無責任だ。