三菱UFJ不正 法令も顧客も軽視とは | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の昨日の東京新聞社説。

かなり説得的。

 

 金融庁は三菱UFJ銀行と関連証券会社の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券に近く業務改善命令を出す。3社は顧客企業の経営情報を不正に共有した金融商品取引法(金商法)違反の疑いが持たれている。

 

 三大銀行の一角が関わった不正は金融業界全体の信頼を損ないかねない。金融庁には全容の徹底解明と厳しい処分を求めたい。

 

 金商法は、企業の経営情報を容易に把握できる金融機関が、非公開情報を取引先の同意がないまま関連会社などに提供することを禁じている。

 

 金融庁に行政処分を勧告した証券取引等監視委員会の調査では、三菱UFJ銀の役員(当時)が2021~23年、顧客の企業買収計画や株式売却に関する情報を関連証券に繰り返し提供していた。

 

 この間、顧客側は機密を守るよう申し入れていたが、役員は求めに応じなかったという。

 

 一連の不正が行われたのは、三井住友フィナンシャルグループ内で同様の行為が発覚した時期と重なる。顧客を軽視するにとどまらず、同業他社の不正を知りながら自らも違法行為に手を染めていた形で、順法精神の欠如にはあきれるほかない。

 

 当時の三菱UFJ銀の三毛兼承頭取をはじめ経営トップらが不正行為をどの程度把握していたのかも解明する必要がある。

 

 三毛氏が金融業界を束ねる全国銀行協会会長を務めていた時期でもあり、責任は重大だ。金融庁は経営陣の関与の有無も詳しく調べるべきだ。

 

 資金を貸し出す銀行は、借り入れる企業に対して優越的立場にある。その銀行が法令を堂々と軽視し、グループ証券の経営を後押しするのは、すべての顧客に対する背信行為に等しい。

 

 3社を指導する立場の三菱UFJフィナンシャル・グループの責任も見逃せない。金融庁の調査とは別に、親会社として第三者機関を設けて不正の全容解明に努めるなど、信頼回復に向けた先頭に立たねばならない。