顧客の信頼損ねた三菱UFJは猛省を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

もっとも、猛省だけでなく、

それ相当のペナルティを課すことが重要だろう。

 

 

証券取引等監視委員会は三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)傘下の銀行、証券2社を行政処分するよう金融庁に勧告した。顧客企業の経営に関する重要情報を、その企業の同意を得ずにグループ内で共有していた行為が問題視されている。最大手行の法令違反は極めて残念だ。

 

金融商品取引法に反したとして処分勧告を受けたのは、三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社。勧告を受け、金融庁は3社に業務改善命令を出す検討を始めた。

 

関係者は勧告を重く受け止め、不祥事の再発を防ぐ策を徹底して講じなければならない。銀行と証券2社だけでなく、FGのグループ管理のあり方に問題がなかったかも点検が欠かせない。

 

監視委によると、三菱UFJ銀行が取引先から得た内部情報を無断で証券会社に渡したり、系列証券との取引を促す見返りとして融資の金利を引き下げたりした。問題事案の数は2桁に上り、役員の関与も指摘されている。

 

驚きを禁じ得ないのは、顧客の意向に反する形でグループ内の情報共有が進められた点だ。銀行と証券会社による顧客情報の共有に関する「ファイアウオール規制」の緩和は、顧客の意向を尊重する姿勢が大前提になってきた。顧客と社会の信頼を損ねた三菱UFJは猛省すべきだ。

 

取引先の資金を握る銀行は「優越的地位」にあるとされる。その立場を悪用した営業がまかり通れば、顧客の利益に反した取引が横行し、金融市場の健全な競争も損なわれる。監視委は三菱UFJ銀行の行為を「優越的地位の乱用」とは認定しなかったが、節度を欠く振る舞いは許されない。

 

マイナス金利政策の解除で貸し出しの利ざやが改善し、銀行収益は好調だ。支払う金利の負担に耐えられない取引先の存廃の判断を銀行が担う場面も増えるだろう。銀行は自らの社会的責任が一段と重くなることを肝に銘じ、ふさわしい行動をとってほしい。

 

欧州の金融機関は銀行と証券の双方の業務を担うユニバーサルバンクとして活動するなど、欧米と日本の法制には違いがある。銀行界は国際競争の観点からファイアウオール規制の緩和を求めてきた。今後、規制緩和の議論を進めるためにも、まずは三菱UFJと業界に厳格な法令順守を望む。