G7は複合危機への対処で結束保て | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

 

もっとも、「言うは易く行うは難し」

であることは間違いない。

 

特に、7月には英、仏で総選挙が、

11月には米大統領選を控えており、

我が国でも今秋までの総選挙が取り沙汰されており、

G7は複合危機のなかで、結束するどころか、

むしろ分裂しかねないと懸念せざるをえまい。

 

 

戦乱が続く欧州と中東に加え、紛争の火種がくすぶるアジア。イタリアで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、同時に進行するこれらの危機にG7が協調して取り組む姿勢をひとまず打ち出した。自由な国際秩序の維持へG7が結束を保てるか、未曽有の難局を迎えている。

 

首脳宣言は「国際社会は互いに絡み合った複合的な危機に直面している」と危機感を示した。その象徴が中国によるロシアへの軍民両用の資材の提供だ。中国の支えでロシアのウクライナ侵略が長引けば、台湾有事への米国などの備えが手薄になりかねない。

 

中国は資材の提供をやめるべきだ。G7がロシアとの取引に関わる海外金融機関に制裁を科すと打ち出したのは適切だ。

 

ウクライナ支援では500億ドルの追加融資を年内に実行し、西側諸国が制裁で凍結したロシアの資産の運用収益を返済にあてる枠組みをつくる。米英が主張していた資産を没収して支援に回す案は国際法に違反しかねず、ロシアの報復を恐れるドイツやフランスなどは慎重だった。

 

各国の政治情勢に振り回されず、まとまった金額を継続して提供できる手立てを整えた点は評価したい。日本も軍事目的に使われない形での融資を検討する。ロシアの出方を注視しつつ、米欧と足並みをそろえるのは妥当だ。

 

G7は中国の東シナ海などでの行動に懸念を共有し、北朝鮮とロシアの軍事協力を強い言葉で非難した。日本にとってこれらは直接の脅威だ。地理的に遠い欧州の関心をインド太平洋地域につなぎ留める努力を続けたい。

 

パレスチナ自治区のガザ情勢を巡っては、バイデン米大統領が公表した新たな停戦案に全面的な支持を示した。米国をはじめ、各国はあらゆる手段を用いて交渉を妥結に導いてほしい。

 

中国の過剰生産問題では名指しを避けつつ懸念を共有した。中国は問題自体が存在しないという態度を取るのをやめ、国際社会の懸念に真摯に向き合うべきだ。

 

世界の安定はG7だけではおぼつかない。今回のサミットもインドやトルコといったグローバルサウスの国々が参加した。これらの新興・途上国はウクライナ侵略などで必ずしもG7と同じ立場ではない。彼らの力をどう国際秩序の維持に生かすか。引き続き知恵を絞る必要がある。