掲題の今朝の東京新聞社説。
一理あるのだが、問題なしとしない。
なぜなら、光熱費高騰だけが、
最近のインフレの原因ではない。
また、インフレが一時的なら、
一時的な給付金などの財政支援で済むのだろうが、
一時的ではなく過去2年間もインフレが続いてきており、
日銀の名目ほぼゼロ金利水準の過度な金融緩和が継続するかぎり、
通貨安とインフレの悪循環は
まだまだ継続すると見ざるを得ないからだ。
例えば、ガソリン代への補助金は
既に2年間を超えて財政支援を続けており
政府支出の増大と財政赤字拡大が続いており、
日銀は国債を現在月間6兆円もの規模で買い取りして、
事実上マネタイズしており、
これも将来のインフレ要因を形成しつつある。
つまり、一時的ではないインフレを抑制するためには、
まずもって日銀の金融政策が本腰を入れて
物価抑制に動かなければならない。
しかし、物価上昇を超える大幅金利引き上げとなれば、
景気後退懸念も避けられない。
くどいようだが、したがって、物価安定のために
金融政策の正常化を急ぐことと、
消費税撤廃に向けた消費税率5%への恒久的引き下げを
同時に実施する財政と金融政策の
的確なポリシー・ミックスでしか、
現下の少子化、
経済(消費)長期停滞、
インフレ、
通貨大幅安という4重苦という
戦後最大の政治・経済・金融危機から
脱出することは不可能なのである。
以上の意味で、光熱費高騰懸念は誠に理解できるが、
既に弥縫策では済まない状況に
一般市民は追い込まれている現状を正しく理解せねばなるまい。
政府は、家庭や企業の電気・ガス料金を抑制する補助金を5月使用分を最後に打ち切った。電気・ガス料金ともに7月請求分から上がり、家計の負担は光熱費がかさむ夏以降、一段と増える。
食品の値上げも続いている。このまま物価が上昇し続ければ春闘の賃上げ効果は消滅しかねない。政府は深刻な打撃を受ける世帯や中小企業に的を絞った支援の枠組みを早急に構築すべきだ。
補助金打ち切りで東京、中部、北陸など電力大手10社と、東京、東邦など大手ガス4社の料金は軒並み上昇。使用料金が平均的な世帯で電気・ガス合わせて年3万円程度の負担増との試算もある。
打ち切りの理由は、液化天然ガス(LNG)や石炭などの原材料価格がロシアのウクライナ侵攻前に戻ったためという。
その一方、政府は石油元売りを通じた支援であるガソリン代への補助は継続する方針だ。
厚生労働省が公表した4月の毎月勤労統計調査で、実質賃金は前年同月比25カ月連続でマイナス。物価高に賃上げが追いついていないにもかかわらず、電気・ガス料金への補助金だけを、なかば自動的に打ち切るのは、家計の実態を軽視しているのではないか。
そもそもガソリン代の補助は、自動車などを保有している人には恩恵があるが、保有していなかったり、あまり使わなかったりする世帯には不公平感が否めない。
立憲民主党は中・低所得世帯に月3千円のエネルギー手当を支給し、中小企業にも月最大50万円の電気・ガス補助金を給付する対策を公表。加えてガソリン価格が3カ月連続で高騰した場合、価格を引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を提案している。
同条項は東日本大震災の復興財源確保などのために凍結され、解除には法改正が必要だ。
エネルギーに対する補助は多額の財源を必要とし、化石燃料に補助すれば脱炭素の流れと矛盾することにも留意する必要がある。終了時期の判断も難しい。
ただ、富裕層や円安で潤った一部大企業を除き、世帯の大半や中小企業が向き合う日常はあまりに厳しい。支援を失い、暮らしが足元から崩れては元も子もない。
政府と与野党が胸襟を開いて知恵を出し合い、効果的な支援策を再構築すべきだ。力を合わせなければ、暑い夏は乗り切れまい。