企業は増える株主提案に結果で応えよ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

株主総会では企業の説明する力が問われる

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

 

もっとも、実質金利がマイナス圏に沈み、同時に、

実質実効為替レートが変動相場制移行後の最安値圏に沈む込む日本経済を背景とする

企業の業績や株価が持続的なものかは大いに疑わしい。

 

したがって、短期的で刹那的な株主提案に

長期的な合理性が認められるか否かも疑問が残ると言わざるを得まい。

 

 

利益還元や取締役の選任などに関する株主提案を受ける企業が増えている。多くは「アクティビスト」と呼ばれる物言う株主からのものだが、個人や伝統的な資産運用会社が賛同できそうな内容も少なくない。企業は株主の声に真摯に耳を傾け、業績や株価などの結果で応えるべきだ。

 

企業統治(コーポレートガバナンス)改革の起点である「ガバナンス・コード」の適用から、今年6月で10年目を迎えた。三菱UFJ信託銀行の集計によれば、6月総会の株主提案を受けた企業数はこの10年で3倍に増え、2024年は91社と過去最高を記録した。議案数も336件と昨年に続き、最高水準にある。

 

企業と株主の対話を促したガバナンス改革は、一定の目的を果たしつつあるといえる。今後も企業は資本市場の圧力から逃げず、収益力を磨いてほしい。

 

何よりも企業に必要とされるのは、株主への説明責任を果たす力を高めることだ。

 

取締役の交代を提案されたダイドーリミテッドは、対抗策として現取締役の大半の退任と独自の新候補を提案した。こうした経営の選択に関わる対立にも企業は向き合わなくてはならない。総会で信を問うのであれば、候補者の適性に関する丁寧な説明が要る。

 

利益還元を求める声は相変わらず多い。昨年の株主総会に続き、米ファンドから自社株買いを提案された戸田建設は「内部留保資金については成長投資に優先して充当する」として、反対を表明した。投資の中身や収益化の見通し、資本効率改善への道筋に関する説明力が試されている。

 

見逃せないのは10年にわたるガバナンス改革を経て、多くの資産運用会社が議決権行使の基準を厳格化している点だ。

 

例えば、アセットマネジメントOneは取締役選任の判断材料のひとつとして、株価騰落と配当による「株主総利回り」を加えている。株主にとっての経営の具体的な成果を求めたものだ。「社外取締役比率3分の1以上」といった形式だけにこだわる企業は、賛成を得にくくなる。

 

株価などの結果を求める一般投資家の利害は、個人も含め、アクティビストと一致する場合が多い。経営に口を出さない持ち合い株主は減少の一途だ。企業には例年にもまして強い緊張感をもって株主総会に臨んでもらいたい。