進む少子化 超党派で議論を続けよ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

問題なしとしない。

 

少子化が進んだことなどは、だれもが知っている。

 

分からないのは、少子化の原因を突き止めて、

実効性のある処方箋を描くことだ。

 

少子化という目の前の現象のみを見て、

その一時的な弥縫策に過ぎない補助金や

給付をいたずらに増やしてみても、

過去ほぼ30年間にわたって、

少子化には全く歯止めがかかってきていないではないか。

 

効果のない政府支出をいたずらに継続してきた挙句に、

一段の増税さえもやぶさかでないかのように説く朝日社説は、

昨日の日経社説のように明らかに

大きな誤謬に陥っていると言わざるを得ない。

 

保守派と見られる日経社説のみならず、

リベラル派と見られている同社説も、

極めて重要な少子化問題に関して、

誤って共に増税を主張してきており、

誠に遺憾ながら、このままでは、

日本の衰亡を早めるだけだとの

厳しい批判を免れまい。

 

なお、以下に、少子化問題に関する

昨日の日経社説への筆者コメントを再掲しておきたい。

 

 

 

 

ノーベル経済学賞を受賞した故シカゴ大学教授ベッカー氏の

有名な「多産の経済学」にあるように、

子供を増やすために最も重要なことは、

一時的な補助金や給付金等ではなく、

生涯にわたる家計の実質可処分所得を増大させることが肝になる。

 

弥縫策は有効でなく、無駄である。

 

ましてやそのような無効な補助金や

給付金を増やすための消費税増税など論外。

 

むしろ、家計の実質可処分所得を増やすためには、

消費税撤廃に向けた消費税税率の5%への

恒久的な引き下げが必要不可欠だ。

 

その上で、インフレを抑制し実質所得を低下させないために、

実質政策金利のプラス圏への浮上を中心に、

金利の正常化を粛々と同時に展開していく必要がある。

 

同社説は、信頼に足らないキシダノミクスをお追従するかのように、

診断書は正しく見えても、

処方箋がまるで誤っている。

 

このままでは、長期的に見て、人口は単純計算で

72.7万人かける90年間で6500万人前後となり、

日本の人口も経済規模も半減していくことになろう。

 

同社説のように誤った処方箋を描く

政府の司令塔を強化しても、

悪政を増幅させるだけに終わるだろう。

 

同社説は、日本の「自滅の経済学」を読者に誤って

主張しているとの誹りを免れまい。

 

 

 

少子化がまた進んだ。昨年の「合計特殊出生率」は1・20まで下がり、過去最低を更新した。国会では改正子ども・子育て支援法が成立したが、与野党の論戦はすれ違ったままだった。危機感を共有し、議論を前へ進める枠組みの構築が急務だ。

 

 コロナ禍下で結婚が大きく減った影響などで、23年の出生率は政府の見通しでも下がるとみられていたが、落ち込み幅が想定を上回った。婚姻数も前年比6%近く減り、50万組を割り込んだ。出生率は今年から反転するとの見通しも怪しくなってきている。

 

 改正子育て支援法を柱にした政権の「異次元の少子化対策」は、深刻な現状への有効な手立てになるのか。たしかに、児童手当拡充など年3・6兆円の「加速化プラン」は、思い切った財源投入という点で前進ではある。

 

 だが、近年の非婚化の広がりを背景にした出生減に歯止めをかけられるかは不透明だ。新しく徴収する子ども・子育て支援金についても、現役世代に負担が偏る手法ではないかという懸念が残ったままになっている。

 

 効果的な少子化対策は何か。必要な財源は社会全体でどう分かち合うのか――。そうした建設的な議論が国会で深まらなかった最大の責任は、増税の議論を封じ、支援金も「実質負担は生じない」と強弁して、負担の議論から逃げた岸田政権にある。

 

 「負担ゼロ」の根拠の一つは「保険料の軽減」だが、前提になる医療や介護の歳出カットや利用者負担増の中身はいまだに不明だ。高齢者の負担増に加え、家族の介護などで若者に影響が及ぶ可能性もある。今後も真摯(しんし)な説明と、丁寧な議論が不可欠だ。

 

 野党側も安定財源の現実的な対案を示さなかったのは残念だ。ただ、議論はこれで終わりでない。政府は2030年代初頭までの「子ども予算倍増」を掲げる。野党も方向性は同じはずだ。かつての「税と社会保障の一体改革」の議論の時のように、党派を超えた協議の枠組みを作るのも一案ではないか。

 

 施策の実効性を高め、効果を検証することも重要だ。新設する「こども誰でも通園制度」は、利用者のニーズに合う仕組みになるのか、人材を確保できるのかが大きな課題になる。男性の育休も、取得率を上げるだけでなく、女性に負担が偏る現状の是正につなげる必要がある。そのためには、社会の意識や働き方の見直しも欠かせない。

 

 総合的・重層的な取り組みに向け、幅広い議論と合意形成を積み重ねていきたい。