掲題のもう一つの毎日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
いたずらに軍事的な圧力を強めれば、東アジアの緊張を高めるだけだ。
中国軍が台湾を取り囲むように大規模な軍事演習を実施した。台湾の頼清徳(らいせいとく)総統の就任を受けたものだ。軍は「『台湾独立』勢力への懲罰」と説明しており、習近平指導部の強い不満がうかがえる。
中国本土に近い離島周辺も演習区域に設定し、海警局の公船も参加した。中国メディアは「台湾封鎖の新たなモデルに重点を置いた演習だ」とする軍事専門家の見方を伝えた。
従来の演習については「厳重な警告」と表現していたが、今回は「懲罰」という強い言葉を使った。同じ民進党の蔡英文(さいえいぶん)氏が総統に就任した際は、このような演習を実施していない。
2022年にペロシ米下院議長(当時)が訪台した直後の演習では、弾道ミサイルを発射した。それに比べて抑制的なのは、米国を過度に刺激するのを避けつつ頼氏をけん制する狙いがありそうだ。
背景には、頼氏の就任演説に対する反発がある。中台関係について蔡氏の路線を継承する形で「現状維持」を表明する一方、「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と主張するなど、毅然(きぜん)とした態度で中国と向き合う姿勢が目立った。
中国は台湾との対話の条件として「一つの中国」原則の受け入れを求めてきた。頼氏の演説について、中台を別の国と見なす「二国論」と指摘し、「海峡の平和と安定の破壊者だ」と非難した。
だが、威嚇こそ海峡の平和と安定を損ねる行為だ。台湾の人々の間でも、力による現状変更への警戒感が高まるだけではないか。
対中融和路線の最大野党・国民党も「不必要な措置を停止し、両岸の平和発展の成果を大切にする」よう中国に呼び掛けた。
ウクライナや中東で戦争が続く中、台湾情勢が緊迫する事態は避けなければならない。
地域の安定に責任を持つ大国として、中国は威圧的な振る舞いを控えるべきだ。