市教委の動員 裁判公開の原則損ねた | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の昨日の東京新聞社説。

かなり説得的。

 

もっとも、これが筆者も在住する

横浜市の教育委員会がすることなのかと、

愕然とするともに、嘆かわしい限り。

 

横浜市長、自らが、しっかりと説明責任を果たすべきだろう。

いずれにしても、以下、ご参考まで。

 

 

横浜市教育委員会が教員によるわいせつ事件の刑事裁判で多数の職員を傍聴に動員し、一般の人が傍聴できないようにしていた。憲法が定める裁判公開の原則、国民の知る権利を損なう愚挙だ。第三者による徹底検証を通じた責任明確化と関係者の処分を求める。

 

 

 市教委は21日の記者会見=写真=で、2019年度から今年4月までに、小学校長が強制わいせつ罪に問われた事件をはじめ4件の裁判に計11回、延べ496人の職員を動員したと明らかにした。業務として出張させ、旅費を支給する場合もあったという。

 

 憲法82条が規定する裁判の公開原則は、裁判の公正さと国民の信頼の確保が目的とされる。とりわけ刑事裁判は国家が人を裁く場であり、国家による権力行使の在り方を、国民が監視するという透明性の確保は欠かせない。

 

 傍聴席を職員で埋め、一般の傍聴を妨げるなど言語道断だ。市教委は動員する職員への文書で「関係者が集団で来たことが分からないよう、裁判所前での待ち合わせは避けて」とも記していた。動員は不適切だと理解していた証左であり、悪質というほかない。

 

 行政機構の市教委が司法手続きを阻害することは、三権分立をも脅かす。憲法規範を蔑(ないがし)ろにする市教委に、児童・生徒に社会の仕組みを教える教育行政をつかさどる資格があるのか、甚だ疑問だ。

 

 市教委は動員の背景に、被害者の保護者らの要請を挙げる。

 

 しかし、性犯罪の裁判は近年、被害者の身元が特定されないよう配慮されている。今回の4件の裁判でも被害者は匿名にされ、裁判所の掲示では被告の氏名も伏せられた例があった。

 

 責任を保護者らに転嫁するような市教委の説明は許容できない。裁判での被害者のプライバシー保護が不十分だというなら裁判所や検察庁に対応を求めるのが筋だ。動員の狙いが、身内の不祥事に社会の注目が集まらないようにすることだったと疑わざるを得ない。

 

 市教委は動員は今後実施しないというが、明確に禁止し、かつ隠蔽(いんぺい)体質を改めなければ、失われた信頼を回復することはできない。