グローバルサウス外交 明確な理念と戦略が必要 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の毎日社説。

一理あるが、問題なしとしない。

 

基本的人権にも続き、自由と民主主義の理念を、

「グローバルサウス」にも求めていく

我が国の基本姿勢を堅持すべきだろう。

 

それらの基本理念に反するような

恣意的で一時的な援助等を強調する

経済発展は短期ではともかくとして、

中長期の物価安定と持続的な経済成長にはつながらず、

ロシアや中国のように国家資本主義あるいは

帝国資本主義にしだいに陥っていき、

我が国を含む欧米先進国やいわゆる西側との対立や覇権争いを

いずれ先鋭化させ深刻化させるだけでだろう。

 

外交面では比較的定評がある岸田政権ではあるが、

そもそも自国の基本的人権、自由あるいは民主主義を軽視して、

グローバルサウス外交で点数を稼ごうと言う姿勢そのものに矛盾がある。

 

明確な理念と戦略とは、単に外交だけではなく、

国政にこそ当てはまるべきことは論を待つまい。

 

つまり、国政と外交とは表裏一体なのであり、

外交だけをことさらに取り上げることに誤りがあり、

また、我が国にとっても、「グローバルサウス」側にとっても、

生産的であるまい。

 

 

 「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国が国際社会で存在感を高めている。いかに関係を強化するか、日本の外交力が問われている。

 

 岸田文雄首相は今月、日本の首相として8年ぶりに、ブラジルを訪問した。新興国の代表格で、今年の主要20カ国・地域(G20)の議長国を務める。グローバルサウスを重視する姿勢の表れだ。

首脳会談を前にインドのモディ首相(左)と話す岸田文雄首相=広島市南区で2023年5月20日(代表撮影)拡大
首脳会談を前にインドのモディ首相(左)と話す岸田文雄首相=広島市南区で2023年5月20日(代表撮影)

 

 ブラジルのほかインド、南アフリカなどの新興国や、途上国など100カ国以上が含まれる。世界の総人口の半数を超え、経済成長が著しい。豊富な地下資源を有する国も多い。

 

 中国やロシアは、主導するBRICSや上海協力機構を通じて連携強化を進めている。一方、ウクライナ戦争やパレスチナ紛争への対応を巡り、こうした国々から批判を浴びた欧米は、関係の立て直しを図ろうとしている。

 日本にとっても、グローバルサウスとの関係強化は、国際社会での発言力を高める上で欠かせない。資源、食料、エネルギーの安定調達にもつながる。

 

 求められているのは、理念と戦略を明確にすることだ。

 

 岸田首相はブラジルで、中国などを念頭に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」の重要性を訴えた。民主主義や人権の押しつけを嫌う国々に配慮して、より共感を得やすい「人間の尊厳」を強調し、気候変動や貧困などの課題の克服に協力する姿勢も打ち出した。

 

 協力を推進するため、政府開発援助(ODA)を戦略的に活用すべきだ。それぞれの国のニーズに応じた、質の高い支援を効果的に実施することが必要となる。予算の増額が難しい中で、地政学的な重要性などの観点からメリハリを付けた取り組みが望まれる。

 

 互いの経済成長につなげる発想も重視したい。日本が育んできた技術力を生かし、製造業のサプライチェーン(供給網)に組み込んで産業を育成するといった施策が考えられる。