掲題の今朝の日経社説。
かなり説得的。
筆者自身、2010年に上梓した
「アメリカ株長期投資入門」(ダイヤモンド社)の副題で
「2022年にNYダウは4万㌦へと上昇する」と主張していた。
一年半ほどの遅れはあったものの
ダウ4万㌦突破は時間の問題だった。
なぜアメリカ株長期投資が
今でも長期投資として推奨できるかだが、
その主たる理由はアメリカ経済の
物価安定と持続的経済成長にあり、
またその核心にあるベストとは言えないまでも、
米マクロ経済政策への信頼感の存在にある。
もっとも、現在のアメリカ株は
かなり割高であることも事実として認めねばなるまい。
したがって、短期的にはかなりの調整も起こり得るので念のため。
まず、市場の恐怖指数とされるVIX指数が通常の20%から
足元では12%台まで大幅低下してきており、
金融市場の慢心度も高いと見ざるを得ない。
さらに、シラーPEは足元で約33倍であり、
過去50年間の平均値22倍をかなり上回ってきている。
なお、シラーPEの過去最高値は約44倍であり、
ITバブル崩壊直前の1999年12月に記録されている。
しかし、筆者は、現在のアメリカ株はかなり割高だが
バブルであるとは必ずしも考えていない。
なぜなら、一方で一株利益の実質ベースでの
高成長率がAI企業等を中心に見込まれ、
他方で割引率の実質金利は足元で
約1~2%のプラス圏で維持されてきているためだ。
これに対して、日経平均株価の4万円超えは
明らかにバブルであると筆者は主張してきている。
なぜなら、一方で、一株利益の成長率は
鉱工業生産出荷指数でみるかぎり
足元で2年度連続のマイナス成長
(22年度に前年度比-0.1%,
23年度に同-1.6%)となっており、
22年年度以降の大幅円安を背景とした
見せかけの利益成長率拡大にすぎず、
他方で割引率の実質金利はマイナス2~3%と
かなりのマイナス圏に抑圧され続けてきているためだ。
かなりの大きな負の割引率で将来の配当や利益を
現在価値に引き直せば理論株価は無限大にまで発散してしまう。
また、日本経済の物価安定と
持続的成長は少しも担保されてきていない。
なぜなら、政府・日銀による財政・金融政策から成る
マクロ経済政策が信頼に足らないためだ。
こうして、一方で、ダウ4万㌦は割高だが
バブルであるとは言えず、
他方で、日経平均株価の4万円は
明らかにバブルであったと主張せざるをえないのである。
米国の最も代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均が17日、終値で4万ドルの大台に初めて乗せた。足元の上昇はインフレの鈍化や利下げ観測を背景にしたものだが、長い目で見れば米国企業の持続的な成長を反映している。
日経平均株価が約34年前の水準にようやく戻った日本に対して、同期間に株価が約15倍になった米株式市場のダイナミズムが示唆するものは大きい。経済の活力を取り戻すために、市場の力を使った日本企業の改革が一段と迫られていると受けとめたい。
ダウ平均は1999年3月に1万ドルを初めて上回った後、2017年1月に2万ドル台、20年11月に3万ドル台に乗せた。数々の危機や暴落を乗り越え、長期にわたって上昇基調を保ってきた大きな理由は、米産業界が顔ぶれを変えつつ、全体として成長を続けてきたからにほかならない。
かつては重厚長大企業が多かったが、近年は急成長のテック企業が目立つ。今年2月にダウ平均に採用された1994年創業のアマゾン・ドット・コムは、生成AI(人工知能)開発に傾斜し、時価総額は約2兆ドルだ。
足元の米株式市場はアマゾンのほかマイクロソフトなど一部のテック関連に人気が集中し、急ピッチな上昇への警戒感は強い。
とはいえ、特定業種だけに注目すると実相を見誤る。1886年の創業で、「我が信条(アワ・クレド)」という企業理念で社会的責任を強調しつつ、積極的
な買収で成長してきた医薬品・医療機器大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのような企業も健在だ。
米国企業は株主への短期の利益配分に傾きすぎているとの批判も日本には根強い。しかし、生命保険協会の調べでは、米企業は1997年から2020年までに研究開発費を2.2倍に伸ばした。日本企業は1.3倍だ。
株主の力がはるかに強い米国の方が、企業は先行投資を怠らず、株価の持続的な上昇を通じて富が社会に還元される構図に注目したい。米国の家計は株式保有が多く、株高や配当などを通じた金融資産からの所得が厚い。
先行投資の成果はいかに資本を有効に使って利益をあげているかを示す自己資本利益率(ROE)に表れる。米国企業は約20%と日本の2倍だ。この差は長らく埋まっていない。資本の大切さを米国の株高は改めて教えている。