掲題の今朝の朝日社説。
問題なしとしない。
内容に大きな問題があるとは言えないが、
日本経済を映す鏡ともいうべきGDP統計公表の翌日に
民需が全滅となって官需の拡張を相殺して余りあった
客観的なマイナスGDP統計を取り上げないで、
日本経済を必ずしも反映しているとは言い難い
株価の根拠とされながらも、自己評価に過ぎない
ともいえなくもない企業決算を今朝取り上げる
同社説の姿勢には問題なしとしない。
加えて、欧米経済学では、賃金と物価の悪循環はあっても、
両者の好循環という概念は存在しない。
いまだに、政府・日銀とともに、賃金と物価の好循環等を説き、
一方で民間の企業経営者の自律的な賃上げを口先介入し、
他方で、肝心の政府・日銀による財政・金融政策の
明らかな失政を批判し、代替策を提示しない
我が国のリベラル派を代表する朝日社説には
猛省が必要というものだろう。
中小企業の経営者や
貿易財でなく非貿易財セクターに属する、
レストラン、理髪、あるいは出版業界の企業経営者にとって、
高(輸入)インフレの中で、
賃上げの余力が存在している等と
同社説は理解しているのだろうか?
上場企業の好業績が続いている。為替相場の円安で海外事業の収益が円建てで膨らんでいるのに加え、製品やサービスの価格引き上げも利益を押し上げているという。その「果実」を働き手や取引先に正しく還元し、賃上げの持続につなげるべきだ。
東証株価指数を構成する企業の2024年3月期決算は、純利益の総額が3年続けて過去最高を更新する見通しだ。25年3月期も高水準の収益が見込まれるという。
牽引(けんいん)役は自動車企業で、営業利益が初めて5兆円を超えたトヨタ自動車は円安による押し上げが6850億円に達し、車の値上げも増益に大きく寄与した。航空や鉄道、ホテル事業を手がける不動産などでも、訪日客の急回復を背景に、好決算が相次いだ。
顧客にとって価値ある製品やサービスの提供が値上げを可能にし、好業績をもたらしたのなら望ましい。ただ、欧州では、コロナ禍後の急激な物価上昇時に企業が費用増を大きく上回る値上げで利益を増やしたとの見方が広まり、「強欲インフレ」とも呼ばれた。日本でも、働き手への分配が十分かどうかといった好業績の内実が問われる。
実際、過去2年にわたり、物価高に賃上げが追いつかず賃金は実質的に目減りし続けてきた。昨年の春闘での賃上げの不十分さが、今回の好決算の背景にあるともいえる。下請けの立場にある中小企業では、大企業側が適正な価格転嫁を受け入れないため、賃上げが進まない現実も指摘されている。
好決算のトヨタは、今後3千億円を取引先の賃上げ支援などに振り向けるという。だが、日本商工会議所の小林健会頭は先日の記者会見で、下請けへの還元は「必要なコストとしてあらかじめ入れておかないとおかしい」と述べ、もうけを出してから次の年度に還元するような姿勢に、疑問を示している。
今春闘の賃上げ率は、連合の集計でベースアップ分が3%台半ばと、昨年を超える水準になった。実質賃金は今夏から秋にプラスになるとの予想が多い。だが、雇用の7割を占める中小企業や非正規も含めた働き手全体の賃金が十分に上がるかはまだ見通せていない。
これまでの実質賃金の目減りのなかで、個人消費はふるわない状況が続いている。働き手に報いないまま短期的なもうけを得ても、景気が停滞すれば、企業自体の首を絞めることになる。物価上昇を上回る賃上げを定着させていく責務を、企業経営者は改めて確認してほしい。