掲題の今朝の日経社説。
かなり説得的だが、
問題なしとしない。
要するに同日経社説の診断書は、比較的説得的なのだが、
その処方箋には効力がなく問題ありと言わざるを得ない。
特に、1~3月期に見られた
個人消費、
設備投資、
住宅投資が全て実質ベースで
前期比縮小したという民需の総崩れと対照的に、
政府消費と
政府公共投資だけの官需のみに依存する、
まるで「官尊民卑」のように分断され、
歪(いびつ)な日本経済の
真の姿を的確に表現することに成功していない。
なかんずく、持続的経済成長に必須な双発エンジンである
消費と(設備)投資の好循環であるが、
消費と投資が共に前期比で縮小し、1~3月期において、
逆に、消費と投資の悪循環に再び陥ってしまった事実は軽視できまい。
この消費と投資の悪循環を、単に、
認証不正問題等の一時的な要因に
帰着させることは難しかろう。
なぜなら、同社説は一言も言及していないが、
GDPデフレーターでみた付加価値ベースの物価上昇は
1~3月期に前年同期比で+3.6%上昇して、
政府・日銀の2%物価安定目標を大きく超え続けているためだ。
なお、2023年度全体では、GDPデフレーターが前年度比で
+4.1%も上昇したことが本GDP統計では記録されている。
つまり、10%の高消費税率と
2%をかなり上回るインフレ税というダブル・パンチで
家計の実質可処分所得が落ち込み、消費が抑圧されて、
それに伴い投資も不振に陥るという
消費と投資の悪循環こそが、
日本経済の物価安定と持続的経済成長を阻んでいる
構造要因とみざるをえない。
すでに30年を失ってきて久しい日本経済の姿を目の当たりにして、
最低賃金の引き上げやら、
(パーテイー券の乱造に繋がりかねない)産業政策やら、
人材の適正な配分を説き続ける日経社説は、
政府・日銀の誤ったマクロ経済政策から
読者の関心をそらしかねない欺瞞ともとられかねず、
誤った処方箋と言わざるを得ない。
高インフレ、消費長期停滞、少子化という
日本経済の3重苦から我が国が抜け出すためには、
「令和という国家」を改造するぐらいの
革命的な発想法が必要になるだろう。
とりわけ、消費税撤廃を志向する
消費税率5%への恒久的引き下げと、
金利の正常化という財政と金融政策の
ポリシー・ミックスこそが核心となろう。
(詳しくは3月マンスリーなどをご参照。)
令和という国家の命運は、
これまでの世襲化・特権化する
悪しき国家資本主義あるいは
帝国資本主義とも言い得る政治経済体制から抜け出し、
基本的人権に基づき、自由と民主主義を礎(いしずえ)として
家計と民間企業を主体とする自由闊達で競争的な市場経済と
市場資本主義を確立できるかにかかっていよう。
これらの意味で、同社説は
日本経済の鏡であるはずのGDP統計と日本経済の本質から、
目をそらし続けているとの批判を免れまい。
長引く物価高が家計の節約志向を強め、景気の先行きを不透明にしている。内閣府が16日発表した2024年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比の年率換算で2.0%減り、2四半期ぶりのマイナス成長となった。
とくに個人消費は前期比0.7%減と4四半期連続で減少した。消費回復には物価上昇を上回る勢いで賃金が増える必要があるが、最近の円安で実現が遅れそうな気配だ。消費動向を注視するとともに、賃上げの持続へ生産性を向上させる改革を急ぐ必要がある。
1〜3月期の実質GDPは認証不正問題で一部自動車メーカーの生産・出荷が滞り、個人消費は耐久財を軸に減った。輸出や設備投資の落ち込みにも波及した。
自動車の生産減は一時的な現象であり、今回のマイナス成長を過度に悲観すべきではないだろう。だが内需の柱である個人消費の不振は無視できない。4四半期連続のマイナスは世界に金融危機が広がった08〜09年以来だ。
23年度を通してみると実質成長率は1.2%と3年連続でプラス成長を保ち、名目GDPは前年度比5.3%増の597兆円と600兆円の大台に迫った。だが昨年夏以降は名目・実質ともに成長の勢いがはっきりと鈍っている。
1〜3月期は働く人たちの所得の総額である雇用者報酬が名目では前年同期比で2.1%増えたのに、実質だと1.0%減った。賃金上昇が物価高に追いつかず、実質賃金の目減りが続く。
今年の春季労使交渉での大幅な賃上げは夏場にかけて実際の給与に反映される。だが円安や政府の物価高対策の縮小が物価をさらに押し上げれば、実質賃金のプラス転換は遅れる。消費の下振れリスクに目配りする必要がある。
米国では15日発表の4月の消費者物価指数でしつこいインフレに減速の兆しがみえ、急激な円安・ドル高に歯止めがかかった。それでも政府・日銀は円安進行への警戒を緩めるべきではない。
より重要なのは、中小企業を含めた積極的な賃上げが持続するよう、生産性を高める民間の挑戦を最大限に引き出す取り組みだ。最低賃金の継続的な引き上げに向けて、政府は産業育成策や社会保障制度を見直してほしい。
人手不足が成長の制約要因にもなるなか、貴重な人材が成長分野に移りやすくする抜本改革こそが消費拡大への王道である。