過去最高の気温は地球からの警鐘だ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝のもうひとつの日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

地球温暖化の進行による影響は危機的状況にある。洪水や干ばつ、山火事など温暖化の影響とみられる災害が頻発し、人々の生活や経済基盤を脅かしている。各国の真剣な取り組みが急務だ。

 

世界気象機関(WMO)によると、2023年の世界の平均気温は産業革命前よりも1.45度上昇し、観測史上最も暑かった。海の平均水温も過去最高となり、9割を超す海域で「海洋熱波」と呼ばれる異常現象が発生した。

 

温暖化の影響に、異常気象を招く「エルニーニョ現象」が重なった。高い気温と水温は続き、WMOは「24年はさらに暑くなる恐れがある」と警鐘を鳴らした。

 

温暖化対策の国際ルール「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標を掲げる。再生可能エネルギーは大きく伸びているが、需要に追いつかない。電気自動車の普及に勢いがなくなるなど、達成に向けた道筋は険しさを増す。

 

現状のままでは気温上昇が今世紀末には3度近くに及ぶ。災害多発の未来を避けるには、エネルギーの安定供給を実現しつつ、脱・化石燃料を加速させるべきだ。

 

二酸化炭素(CO2)が出ない再エネをできる限り拡大するのは当然だ。だが、一辺倒では苦しい。安全に配慮しつつ原子力発電を最大限活用する必要があ

る。

 

省エネルギーはまだ深掘りできる。建物の断熱性を高めるほか、少ない電力で動くヒートポンプ給湯器の導入を進めたい。欧米は政策展開を急いでおり、世界に取り組みを広げたい。

 

再エネや原発で不足する分は、脱炭素対策を施した火力発電でまかなう必要がある。工場などから出るCO2を回収して地中に貯留する技術(CCS)も普及を急がねばならない。国際社会は持てる技術や手段を総動員すべきだ。

 

足りないのは対策への投資だ。国際エネルギー機関(IEA)によると、23年は1.8兆ドル(約270兆円)と大きく増えた。1.5度目標の実現には30年までに年4.5兆ドルにする必要がある。民間の投資や技術開発を促すよう、政府は効果的な財政支援やルールづくりを急ぐ必要がある。

 

温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」が実現すれば、世界の温暖化はほぼ収まるとされる。脱炭素社会への道は平たんではないが、目指すべき道筋を見失ってはならない。