掲題の今朝の朝日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
失墜した政治への信頼回復どころか、逆に不信に拍車をかけるのではないか。実態解明を置き去りに、内輪の「基準」で結論を出しても、岸田首相がめざした「政治的なけじめ」にはなりえない。
自民党が党紀委員会を開き、派閥の政治資金規正法違反事件に関係した安倍、二階両派の39人の処分を決めた。安倍派幹部のうち、座長だった塩谷立氏と参院側トップの世耕弘成氏は、「除名」に次ぐ「離党勧告」となった。
だが、これは新型コロナの緊急事態宣言下でクラブ通いをしていた3氏と同じ扱いだ。離党してもほとぼりがさめれば、戻る道はある。現に3氏はすでに復党を果たした。国民の目から見れば、決して「重い」とは言えない。
塩谷、世耕両氏とともに、パーティー券収入の還流復活を協議した下村博文、西村康稔両氏は、その次の「党員資格停止」と差をつけた。誰が継続を決めたのか。当時、派閥運営に影響力のあった森喜朗元首相の関与はなかったのか。肝心な点があいまいなままでは、真の責任追及にはならず、国民はもとより、党内にも説得力を欠くだろう。
安倍派幹部「5人衆」のひとり、萩生田光一氏はさらに軽い「党の役職停止」。派閥の事務総長経験がなく、還流をめぐる協議に加わっていなかったためだが、個人として3千万円近い不記載もあった。すでに政調会長を離れている以上、形だけの処分とみられても仕方あるまい。
そもそも不記載があった85人中、過去5年の総額が500万円以上に、処分の対象を絞った判断が妥当なのか。派閥幹部以外、ほぼ全員が国会の政治倫理審査会に出席しておらず、党の調査では、不記載を知っていた議員も11人いた。そうした事情を無視した便宜的な線引きは、おざなり以外のなにものでもない。
二階派トップで、個人としても党所属現職議員で最多の3526万円の不記載があった二階俊博元幹事長が、次期衆院選への不出馬を理由に、処分を免れたのもおかしい。最大1年半の残る任期中、何もなかったかのように振る舞うことなど許されない。
岸田派では、会計責任者が3059万円のパーティー収入の不記載で略式起訴され、有罪が確定したが、派閥会長だった首相は不問となった。自らに甘いとみられたら、主導した処分への理解は、さらに遠のくに違いない。
到底これで一区切りとはならない。引き続き真相究明に努めるとともに、政治資金を透明化する制度改正の議論を急ぎ本格化せねばならない。