川勝知事が辞意 舌禍が招いた結末だ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の東京新聞社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

 静岡県の川勝平太知事=写真=が辞意を表明した。新入職員への訓示で職業差別とも捉えられかねない発言をし、批判が相次ぐ中での突然の決断で、4期目の任期を約1年残しての辞職となる。度重なる舌禍など自身の振る舞いによる帰結だが、リニア中央新幹線問題をはじめ多くの課題を残したままの職務の投げ出しは、県民の負託への裏切りといえよう。

 

 問題の訓示では「県庁はシンクタンク。野菜を売ったり、牛の世話をしたり、物を作ったりとかと違い、基本的に皆さまは頭脳、知性の高い人たち」などと述べた。農業や製造業に従事する人たちへの敬意を欠いた暴言だ。3日の会見で謝罪したが撤回はせず、差別意識はないとの釈明に終始した。

 

 不適切な発言はこれまでも繰り返されてきた。2021年の参院補選では元御殿場市長の自民候補を念頭に「あちらはコシヒカリしかない」などと揶揄(やゆ)し、県議会が辞職勧告決議案を可決。昨年7月にはあと1票で不信任決議案可決という瀬戸際まで追い込まれた。

 

 だが「今度、不適切発言をしたら辞職する」と表明した後も「男の子は、お母さんに育てられる」「磐田は浜松より文化が高かった」などと発言し、物議を醸した。

 

 今後の影響が特に大きいのがリニア問題だろう。川勝知事は大井川の流量減少や南アルプスの生態系への影響を懸念し、県内区間の着工を認めていない。このためJR東海は先ごろ正式に、当初予定だった27年の品川-名古屋間の開業断念を表明した。

 

 沿線自治体からは知事の硬直的姿勢を批判し、辞職で計画前進を期待する声も上がる。ただ、大井川への影響は、お茶をはじめとする地元農業や産業に直結する。

 

 「命の水を守る」と国やJRと対峙(たいじ)し続けた川勝知事の強い姿勢が、JRからさまざまな対策を引き出したことは間違いない。3年前の知事選での圧勝はその手腕への評価でもあったはずだ。

 

 知事は辞意の理由の一つに、開業先延ばし確定で、リニア問題に「区切り」がついたことを挙げたが、課題は残っており、県民を納得させる説明とは言い難い。

 

 何にせよ、功績も多い知事としてのキャリアを舌禍で塗りつぶしてしまった感があるのが残念だ。